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2021.12.27 議会改革

第25回 自治体議会の権限について改めて考える(3) ─総括的な考察と展望─

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4 議会の権限をどう評価し、どう考えていくべきか

 自治体議会の権限をめぐっては、実務や多くの解説書では、地方自治法96条1項の規定につき、その経緯や趣旨から、議会の議決事件を制限列挙したものであり、基本的にそれらに限定されると解してきた。これに対し、長の権限について規定する同法149条は、条文上「概ね」ともあるように、概括例示したものとされており、法令によって積極的に他の機関の権限とされない限り、広く長の権限としての推定が及ぶとも解されてきた。同法96条2項についても、実務は、3で述べたように、条例で議決事件に追加しうる事項を限定的に解してきた。
 このようなことから、議会の権限は限定的であり弱いという見方が大方の相場であったといえるだろう。
 しかしながら、前回において一覧表で示したとおり、法律等で議会の議決を要するとしている事項は極めて広範かつ多様である。すなわち、同法96条1項1号から14号に掲げるものにとどまらず、同項15号の法律又はこれに基づく政令による事項は多数に上っているのであり、「議会の議決」といった用例だけでなく、同意、承認、決定等を要するとされている事項もあり、意見や請求といった権限もある。加えて、制限列挙主義の例外となる同条2項により条例で議会の議決事件として追加できる事項についても、規定上も実質上も拡張されてきており、その余地はこれまで語られてきたよりも広いといえる。
 また、法律等で条例事項とされているものも数多く、かつ、多岐にわたっているだけでなく、増大してきているのであり、それらも議会の議決の対象となる。もとより、機関委任事務の廃止や法治主義の強化などにより、条例の対象については広く解する傾向が強まっている。
 このほか、議会の議決の対象とまではされないものの、議会に報告したり提出したりすべきとされているものが少なくない表「議会への報告・説明・提出等の事項」参照)。これらについては、議決が必要とされないため、重要な権限とはみなされず、実際には受領して終わっていることが少なくないようであるが、これらに関し調査の形で審議を行うことが可能である。議会への報告や提出は、情報の公開と行政の監視といった役割を担うためのものでもあり、近年は、インターネット等を通じて直接住民に公開する方法も採用されるようになっているものの、それらを有効活用することで執行部側のチェックや監視に生かすことなども考えられる(13)。この点、例えば、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」では、重大事態への対処として、長は、公立学校について再調査を行った場合には、その結果を議会に報告しなければならないこととされているが(30条3項)、これは、議会を通じて再調査結果を公開するだけでなく、長による対処について議会の監視機能を働かせることを期待するものであり、いじめはなお深刻な問題であるだけに、その役割は重要といえる。
 以上の点からすれば、議会の権限はかなり広範であると見るべきであり、地方自治法96条1項の規定が制限列挙かどうかということはそれほど大きな意味をもたなくなってきているのではないかと考えられる。
 もっとも、議会の議決事項については、広ければ広いほどよいというものでもなく、長との権力的なバランス、議会の能力、行政の効率性などの問題も無視することはできないといえる。議会の権限の拡大を目指す議論においては、民主主義が強調されがちだが、民主的統制ももちろん大事であるものの、権力分立や行政の中立性・公正性といったことも考慮する必要がある(14)。何よりも大事なことは、住民の福祉のために自治体がその役割を適切に果たすにはどのような決定プロセスが適当かということであり、民主主義もその手段であって絶対的なものではない(15)
 他方、自治体議会の場合には、具体的な決定や執行にかかわる権限が多く、議会の実際の活動や機能においても、立法以外のものの比重が比較的大きい(16)。そのようなことなどから、自治体議会について行政機関と捉える議論がいまなお有力に存在すること、だからといって立法機関としての性格を認めないのは妥当ではないことは、本連載でもたびたび指摘したところである。ただ、同じ議会といっても、唯一の立法機関とされ、立法が活動の中心となる国会とは、その位置付け・機能・様相を異にする面があることも確かである。自治体議会が行政における個別的ないし具体的な決定や執行にかかわる理由については、様々なものが考えられるが、多様な住民の意見や利害の調整・反映のための民主的な手続ということのほか、同じ政治機関であり独任制の機関である長のけん制・監視といったことがあるのであり、執行について広く詳細にわたり議会や議員による政治的な関与・介入を認めるものではないといえる。
 では、議会の権限は広いと見ることができるとして、その権限は強いとまでいえるのか。

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