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2021.12.27 議会改革

第25回 自治体議会の権限について改めて考える(3) ─総括的な考察と展望─

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2 条例による追加議決事件の状況に関する若干の分析

 地方自治法96条2項は、制限列挙主義の例外として、条例による議決事件の追加を認めたものであり、自治体の意思決定機関である議会の地位を尊重し、それぞれの自治体(議会)の判断でその機能を強化できるようにするため、必要と認められる事件を条例で議決事件として定められることにしたものといえる。そして、条例で追加できる事項についても、従来対象外とされてきた法定受託事務も一部を除き対象とされるなど、その拡大が図られてきた。
 ただ、条例による議決事件の追加については、行政の効率性との兼ね合いもあり、その追加にあたっては、民主的な行政運営の要請と執行機関による効率的な行政運営との調和をいかに図っていくかが問われることになる。
 また、各自治体における議決事件の追加の状況を見ると、対象事項については多様なものが見られるようになってきているものの、全体としてはそれほど活発に活用されているとは言い難いように思われる。
 その要因としては、様々なことがありうると思われるが、一つには、執行部の側が、その追加に対して消極的な姿勢を示すことが多く、その調整が難航することがある。議会の議決事件とされることは、執行部側にとっては、議会手続という手間が発生するだけでなく、決定権が議会の側に移行することを意味することにもなる。
 そして、もう一つには、議会の議決の対象とならない事務を広く解しようとする傾向がいまだに強いことであり、実務においては「法律が明瞭に長その他の執行機関に属する権限と規定している事項」だけでなく「事柄の性質上当然に長その他の執行機関の権限と解さざるをえない事項」についても議会の議決は及びえないと解されてきており、これが、議決事件の追加に執行部側が反対する根拠ともされてきた。
 この点、2012年5月1日の総務省(自治行政局行政課長)「地方自治法第96条第2項に基づき法定受託事務を議決事件とする場合の考え方について(通知)」によれば、上記の実務の解釈は自治事務であるか法定受託事務であるかにかかわらず妥当するものとした上で、議会の議決の対象とならない事務として、(1)法律又はこれに基づく政令により地方公共団体に執行が義務付けられている事務であって、その執行について改めて団体としての判断の余地がなく、いわば機械的に行わなければならないもの、(2)法令によって長その他の執行機関の権限に属することとされているものや、事務の性質等から、当然に長その他の執行機関の権限に専ら属すると解されるもの、(3)国家の安全、外交その他国家の存立に直接かかわるもの及び緊急時又は切迫している状況における国民の生命、身体、財産等の保護に関するものが示されており、問題となりうる(2)については、その類型として①長の権限に専属することが条文上明らかな事務、②専門性を有する職員が行うこととされている事務、③審査庁としての知事や仲裁委員等が行う事務、④多元的執行機関が排他的権限に基づき行う事務、⑤許認可等の処分、⑥現場において即時の対応を要する執行段階の事務、⑦公物管理者の具体的な管理事務、⑧財務関係の事務、⑨人事関係の事務が挙げられている。
 議会の議決事件の追加の関係では、これらのうち①、②、④、⑧などの事務が特に問題となりそうだが、①と②と④については、限定的に解することが可能であり、また、⑧についても、入札・契約、給付金の支給、国税徴収の例で行う滞納処分等の財務関係の事務と説明されており、財務関係だからといってすべからく議決の対象外とされているわけではない。しかも、前回において全国3議長会の資料で見たように、実際には、重要な契約、一定規模以上の土地の取得・処分の予約、一定額以上の株式の売払い、一定額以上の出資・出捐(しゅつえん)、入札制度基本方針なども議決事件として定められてきている。財務関係の事務を対象とする場合には、執行部側の抵抗は強いとは思われるが、解釈や対象の仕方の工夫、執行部側との調整次第のところもあるのであり、上記の技術的助言があるからといって議決事件の対象が大幅に限定されることにはならないのではないだろうか。いずれにしても、行政の効率性・適正性・中立性との調和の問題はあるものの、対象外とされる事項について不必要に拡大しないよう限定的に解していくことが肝要であり、議会の側もそのための理論武装をしっかりとするとともに、住民の理解を得ることで住民を味方につけるようにしていく必要がある。
 議会の側の意欲的で粘り強い取組みが期待されるが、その場合には、単に議会の権限強化ということだけでなく、その必要性・合理性やメリットについてしっかりと説明できるようにするとともに、議決事件とした以上それが機能するようにしていく責任が議会の側にあることはいうまでもない。いわんや、それが仮に利益誘導や政治的駆け引きに利用されるようなことなどがあるとすれば、もってのほかというしかない。

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