2021.12.27 政策研究
第8回 市民意見を起点とし、予算・決算審議を連動させた「議会からの政策サイクル」~福島県会津若松市議会の取組み~
市民意見を起点とした政策サイクル
会津若松市議会の議会からの政策サイクルの起点になるのは、「市民との意見交換会」である。会津若松市議会では、通常、5月と11月の年2回、おおむね小学校区に対応した15地区で、地区別の市民との意見交換会を開催している。地区別意見交換会の機能は、「議会報告機能」と「市政・議会運営に関する意見交換機能」の二つである。意見交換会の前半は、5月は予算、11月は決算についてまとめられた議会広報誌をテキストに、議会としての議決説明責任を果たす。後半は、政策テーマや地区課題についての意見交換を行う。2008年に第1回がスタートした市民との意見交換会。当初は議会への陳情、要望、不平、不満で「炎上」することもあったが、スタートから10年以上が経過、参加者の多様性に課題は残すものの、市民から前向きな意見が出る場に進化している。
市民との意見交換会
市民との意見交換会で集められた意見は、広報広聴委員会で、市政に関するもので議会としての政策検討課題テーマとなるもの、議会に関するもので議会自らの課題として検討するもの、市民からの質問等で市民に後日結果を報告するべきもの等に分類される。その後、市政課題と位置付けられたものは、議会基本条例に基づく会議、委員会である常設の政策討論会の四つの分科会に付託される。また、議会の課題は、政策討論会の議会制度検討委員会で議論されることになる。
政策討論会は、市政に関する重要な政策、課題について、共通認識及び合意形成を図り、政策提言を推進する役割を持つ。政策討論会の四つの分科会は、以下のように議会の常任委員会と同一になっている。第一分科会は総務委員会、第二分科会は文教厚生委員会、第三分科会は産業経済委員会、第四分科会は建設委員会。常任委員会の所管事務調査の機能も兼ねる。テーマは、2年の委員の任期の都度、継続、更新されている。2021年7月までは、第一分科会では、「財政健全化」、「ICTと未来社会」等のテーマ。第二分科会では、「地域との連携による防災・減災対策」。第三分科会では、「持続可能な地域産業の育成」、「新型コロナウイルス感染症に関する経済支援策のあり方」等。第四分科会では、「官民連携による降雪対策のあり方」、「都市計画の基本的方向性」等のテーマで政策研究が行われていた。
政策討論会では、設定された課題に基づき、学識経験者を招へいした勉強会、先進地への行政視察、分野別の市民との意見交換会、委員間での自主研究と議員間討議により、課題解決に向けて調査研究を行い、政策を練り上げていく。まとめられた政策提言は、市長に提出され、最終的に市の事業執行につなげていく。その結果をまた市民との意見交換会で返していくというサイクルである。これまで、「湊地区の水資源問題」や「私道の除雪」等、多くの成果を上げている。
政策討論会
学識経験者を招へいした勉強会
先進地への行政視察