2021.11.25 議会改革
第24回 自治体議会の権限について改めて考える(2) ─資料による議決事項の概観─
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
1 議会の議決事項の全体像
今回は、資料の掲載を通じて、自治体議会の議決の対象とされている事項の概観を試みる。
地方自治法96条1項各号に掲げられている事項は、必要的議決事件ともいわれる。また、この規定は、議会の議決事件を制限列挙したものと解されてきており、そのことから自治体議会の権限を限定的に捉える見方が有力ともなってきたが、その当否は次回に検討することとして、ここでは、現行制度において、議決を要するとされている事項について見ておきたい。
議会の議決事件(1)としては、地方自治法96条1項の1号から14号までにその主要なものが掲げられ、そのほかに、15号で規定する法律又はこれに基づく政令により議会の権限に属する事項、同条2項に基づき条例で議会の議決すべきものとして定めた事項がある。
そこで、次に、96条1項により自治体議会の議決事件とされているものを列挙してみたい。
表1は、第一法規D1-law.comの法令検索を用いて、法律又はこれに基づく政令において「議会の議決」について定めている条項を調べ、議会の議決を要するとされているものを分類・列挙したものである。例外的な定め方をしている規定や、「準用する」、「例による」とすることで議会の議決について定める規定などで検索から漏れたものもありうることから、すべてを網羅しているとまではいえないものの、大方のものは収録されているのではないかと思われる。
この表を見ても分かるとおり、法律等で議会の議決を要するとしている事項は極めて広範かつ多様であり、地方自治法以外の法律によるものもかなりの数に上る。一方、政令によるものもそれなりにあるが、それほど多くはないというのが素直な印象である。
ところで、地方自治法96条1項15号によれば、議会の権限(議決事件)について国法で定める場合には、法律によるほかは、法律に基づく政令により規定すべきものとしており(2)、例えば省令で定めることは認めない趣旨ではないかと思われる。地方自治の保障の趣旨に鑑みても、各省大臣のみで制定する省令で自治体における意思決定手続ないし議会の議決について定めるのは妥当ではないといえるだろう。ところが、表1にもあるとおり、省令で議会の議決について定めているものが見受けられる。検索を行っている際にたまたま見つかったものだが、建設省令として制定された水防施設費国庫補助規則の5条1項、農林水産省令として制定された農業保険法施行規則の55条2項の規定である。地方自治法96条1項15号の前身となる1947年制定時の同項9号では「その他法令により議会の権限に属する事項」としていたものを、1948年の改正により同項13号とされた上で「法令」が「法律又は政令」に改正され、それが1952年の改正により「法律又はこれに基く政令」に改正されたものである。1951年制定の前者の省令はともかくとしても、後者の省令は第1次・第2次分権改革後の2017年に制定されたものである(3)。96条1項15号との関係で違法とまでいうべきかどうかは別として、問題が認識され、その是正が図られていくべきではないだろうか。
他方、国法上、自治体議会の議決を要する事項については、すべて「議決」という用語が用いられているわけではなく、「同意」、「承認」、「決定」、「許可」、「意見」、「請求」などの用語も用いられている(4)。