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2021.10.25 議会改革

第23回 自治体議会の権限について改めて考える(1)─議決事件─

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(2)自治体議会の権限の変遷
 そして、1947(昭和22)年に制定された地方自治法では、市町村と都道府県の規定を一本化して、96条で議会の議決事件について規定したが、それは大体従来と同様のものであるとの説明がなされ(26)、制限列挙主義が維持された。
 それが、1948(昭和23)年の地方自治法の改正で、大きく改正され、議会の権限が強化されることとなった。これは、地方自治法96条で自治体に特別に委任される権限をできる限り詳細かつ網羅的に列挙することを求めるGHQの要求(27)を受けたものであったが、96条の改正作業に着手した日本政府は、議会の権限に属する事項をすべて地方自治法に掲げることは不可能として、その大部分を自治体の処理する事務の例示として2条3項で規定することとし、議会の議決事件については、納税者の保護、自治体の重要な経済行為等の適正な処理に関するものを新たに加えることとしたものであった。議決事項として新たに追加されたものとしては、①違法に賦課又は徴収された地方税、使用料、手数料等の払戻しに関すること、②条例で定める財産の取得又は処分、営造物の設置又は処分をすること、③負担付き寄附又は贈与を受けること、④条例で定める契約を結ぶこと、⑤法律上その義務に属する損害賠償の額を定めることなどがあるが、いずれもGHQの改正案にあったものを整理したものであった。
 他方、独立回復後の1956(昭和31)年の地方自治法改正では、上記②の「財産」と④の「契約」に「重要な」という文言が追加され、さらに1963(昭和38)年の改正では、上記の①が削除され、②が「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産」、④が「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約」とされた(28)
 さらに、1963年の地方自治法改正では、従来の「基本財産又は減債基金その他積立金穀等の設置、管理及び処分に関すること」が財務会計制度の改革に伴い「条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること」に改正され、予算外義務負担を独立の議決事件ではなくし、従来の「権利を放棄すること」から「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合」が除外され、従来の「普通地方公共団体がその当事者である……訴訟」が「普通地方公共団体がその当事者である……訴えの提起」に変更された(29)。また、「営造物の設置又は処分」について、公の施設の制度として、その設置と廃止を条例事項とし、特に重要な営造物の独占的利益を与える処分・10年を超える独占的利用に関しては選挙人の投票による過半数の同意、その他の営造物に関しては議会の特別多数を要するとしていたものを、「条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること」を96条1項の議会の議決事件とし、条例で定める特に重要な施設の廃止や長期独占利用の場合の議会の特別多数による議決については244条の2第2項に規定することとした。
 この時代においては、戦後改革の反動などもあって(30)、民主化第一から地方自治体の組織・運営の簡素化・能率化や地方自治の安定化にシフトし、議会についても、効率化などの観点から、権限の見直しが進められたのであった。
 このほか、1986(昭和61)年の改正で、公有地信託制度が導入されたことに伴い、「財産を信託すること」が議決事件として追加され、それが2006(平成18)年の改正で有価証券の信託も可能となったことに伴い「不動産」に改められた。
 近年は、1999(平成11)年の地方分権一括法による改正により機関委任事務が廃止され、自治事務と法定受託事務に再編されたことで、条例の制定対象が拡大することとなった。
 また、制限列挙主義の例外として議会が条例で議決事件を定めることを認める地方自治法96条2項において、法定受託事務は、自治体の事務として再構成された後もその対象外とされたが、2011(平成23)年の改正で、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除き、議会の議決事件として条例で定めることができるようになっている。
 以上のように、議会の議決事件については、時代とともに変遷が見られるのであり、制限列挙主義も、市町村会においては1940年代に入り戦時統制が強められる中で導入され、地方自治法でも、それが維持されたものであった(31)。他方、議会の権限をめぐっては、同法の制定後においても、GHQと日本政府、その後は自治庁・自治省と自治体議会側とのせめぎ合いなどの中で、また、近年の地方分権改革を通じて、権限の強化→効率性等の観点からの見直し→強化といった流れで議論や改正が行われてきているのであり、長との権力のバランスが絶えず問われつつも、自治や民主主義の充実強化と議会の強化は常に結び付いてきたと見ることができるだろう。
 しかし、その民主主義が揺らぎつつある。
 

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