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2021.10.25 議会改革

第23回 自治体議会の権限について改めて考える(1)─議決事件─

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3 議会の議決事件をめぐる歴史

(1)市町村会・府県会の権限
 議会の議決事件について、戦前まで遡って見てみると、市町村会については、1888(明治21)年制定の市制町村制では、市町村会はその市町村を代表し、市町村に関する一切の事件及び市町村に委任された事件を議決するといった、その権限に関する基本規定が置かれるとともに、具体的な議決事件を概括例示する規定が置かれていた。これが、1911(明治44)年の改正で、誤解を避けるためなどとして基本規定から「其市〔町村〕ヲ代表シ」と「一切」といった文言が削られたものの、上記の基本的な仕組みは維持されていた。
 しかし、戦時中の1943(昭和18)年の改正において、基本規定が削除され、議決事件を制限列挙する規定に改められたほか、議決事件に「其ノ他法令ニ依リ市会〔町村会〕ノ権限ニ属スル事項」を加えることで、従来は市町村に属する事項は原則的に市町村会の議決を要するとされていたものを、法令により市町村会の権限と明示されたものだけがその議決の対象となるという原則に変更されることとなった。また、個別の議決事件についても、市町村規則の制定権が一部を除き市町村長の権限とされるとともに、市制においては、議会が制定する市規則で一般規定を設け、あとは市長の責任で執行させるようにするためとして「市費ヲ以テ支弁スヘキ事業ニ関スル事」、「不動産ノ管理処分及取得ニ関スル事」が、市参事会の職務権限に移行するためとして「市吏員ノ身元保証ニ関スルコト」、「市ニ係ル訴願訴訟及和解ニ関スルコト」などが、それぞれ議決事件から削除された。
 このように、戦時下において、行政の能率的処理や中央統制の強化の観点から、市町村会の権限は大幅に制限されるに至ったのであった。
 他方、府県会については、1890(明治23)年の府県制の制定以来、市町村会のような基本規定はなく、その議決事件につき当初から制限列挙方式が採用されるとともに、議決事件も限定的であった。1929(昭和4)年の改正によりようやく府県条例と府県規則の制定改廃が議決事件に追加されたものの、1943(昭和18)年の改正では、市町村会と同様に、規則の制定改廃の権限が府県知事に移され、財産等にかかわる一定事項に関する規則のみ府県会の権限とされた。
 なお、1929(昭和4)年の市制・町村制・府県制の改正により、議会の議員にも議案の発案権が認められることとなったが、その場合には、議員3人以上により文書をもって行うことが必要とされるとともに、歳入出予算の提出権については長の専権事項とされている。
 戦後直後の1946(昭和21)年の市制・町村制の改正では、議決事件として市町村内の団体等の活動の総合調整に関することが加えられるとともに、条例で市町村会が議決すべき事件を定めることができるようにした。後者については、同年の府県制・東京都制の改正でも同様の条項が追加された。ただし、条例で議会の議決事項となしうるのは、その地方公共団体に関する事件とされ、機関委任事務、執行機関の執行処分に属すべき事件は対象外とされた(25)
 

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