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2021.10.25 議会改革

第23回 自治体議会の権限について改めて考える(1)─議決事件─

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(2)議会の議決の適法性
 ところで、自治体議会の議決の適法性については、国会のように自律的判断に委ねられているわけではなく、他者によってチェックされうる。
 長による違法再議がその一つであり、議会の議決がその権限を超え又は法令や会議規則に違反すると認めるときは、長は、これを再議に付さなければならないものとされている(地方自治法176条4項)。再議に付しても、議会の議決がなお違法と認めるときは、総務大臣又は都道府県知事に対し、再度の議決があった日から21日以内に審査を申し立てることができ、さらに、総務大臣・都道府県知事の裁定に不服があるときは、議会又は長は、裁定のあった日から60日以内に裁判所に出訴できることとされている(同条5項~7項)。これは、法律上、機関訴訟として、裁判所の審査の対象となることが特別に認められているものである。
 また、(1)で述べた議会の議決の効力そのものではなく、争いの前提として議会の議決が適法になされたかどうかについては、裁判所の判断の対象となりうる。
 例えば、手続の面では、村の廃止と市の区域への編入の処分の取消しが争われた事件で、高松高判昭和28年10月9日高裁民集6巻13号829頁が、その適否は別として、地方自治法116条1項の「出席議員」と棄権者・無効投票者の取扱いに関し解釈を示した上で、本件事案において県議会で当日の出席議員36名の記名投票の結果、賛成18票・反対16票・白票2票となり、議長が18票をもって賛成過半数として議案を可決確定したことにつき、本件議案は適法に議決されたものと認められるとの判断を示した例(13)などがある。
 他方、実体的な面からは、例えば、市有地を地方自治法237条2項にいう適正な対価なく譲渡したにもかかわらず、同項の議決によらないことなどによる当該譲渡の違法性が争われた住民訴訟で、最判平成30年11月6日裁判集民260号41頁が、財産の適正な対価によらない譲渡又は貸付けに係る地方自治法237条2項の議会の議決がなされたというためには適正な対価によらないものであることを前提として審議された上議決されたことを要するとの先例(最判平成17年11月17日裁判集民218号459頁)を前提としつつ、「当該譲渡等が適正な対価によるものであるとして普通地方公共団体の議会に提出された議案を可決する議決がされた場合であっても、当該譲渡等の対価に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され、両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡等を行う必要性と妥当性について審議がされた上でこれを認める議決がされるなど、審議の実態に即して、当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを認める趣旨の議決がされたと評価することができるときは、同項の議会の議決があったものというべきである」と判示。本件譲渡議決に関しては、市議会において、本件譲渡価格に加えて鑑定評価額を踏まえた上で、本件譲渡が適正な対価によらずにされたものであったとしてもこれを行う必要性と妥当性について審議がなされており、審議の実態に即して、本件譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを認める趣旨でされたものと評価できるから、本件譲渡議決をもって237条2項の議会の議決があったというべきであるとした(14)
 このほか、議会の議決の違法性が国家賠償訴訟などにより争われることがある(15)
 議会の議決が違法・無効であれば、議決はそもそもなかったものとなる。仮に、議会においてこれを取り消すような議決をしたとしても、法的には意味をもたず、それは無効の確認行為にとどまることになる。それ以外の場合に、議会は違法な議決を取り消しうるかどうか問題となりうるが、その議決の執行前であれば場合によっては取り消して適法な議決を行う余地もありうるとの見方もあるものの、いずれにしても議決あるいは議決の執行により法的効果が確定すればもはや取り消すことはできない。
 

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