2021.10.25 議会改革
第23回 自治体議会の権限について改めて考える(1)─議決事件─
2 議会の議決の位置付けと効力等
(1)議会の議決の効力
議会において審議が行われ、議決がなされると、その位置付けや内容はともかく、自治体の団体としての意思か、議会の機関としての意思のいずれかが決定されることになる。
その場合に、団体意思の決定としての議決は、それ自体で直接的に対外的効力を生じるわけでなく、その意思を長が対外的に示すことなどが必要となるものが多いとされる。例えば、議会で可決された条例は、長が公布することにより効力が生じる。ただし、予算については、長に送付され公表されるものの、議会の議決によって成立し、効力を生じるものであり、決算の認定・不認定も議会の議決により確定する。
これに対し、機関意思の決定としての議決については、議員の懲罰や長の不信任などそれがなされることで対外的に法的効果を生ずるものがあるが(10)、法的効果を伴わないものも少なくないことは先に述べたとおりである。
執行機関の執行の前提としての議決は、団体意思・機関意思のいずれにかかわるものであろうと、おのずから自治体の内部手続における議会の意思という位置付けとなるが、内部的なものにとどまるとはいえ、議会の議決や同意を得られなければ執行機関はその行為を進めることができなくなる。
議会による意思決定については、長による再議に付されることがなければ、議決をもって確定し、議会は既に行った議決を取り消すことはできない。議会における審議・議決に慎重さが求められるゆえんでもある。
それでは、議会の議決について不服がある場合に、これを裁判(抗告訴訟)で争うことはできるだろうか。議会の議決の処分性の問題でもあるが、この点についても、議会の意思決定の種類によって違いがあるとされる。
例えば、団体意思の決定としての議決については、処分性が否定されるのが一般的な傾向といわれる。最高裁は、「通常の場合においては、議会が議決をしても、その議決は外部に対し地方公共団体の行為としての効力を持たず、議決に基いて、執行機関が行政処分をした場合に、はじめて効力を生ずる」(最判昭和26年4月28日民集5巻5号336頁)、「一般的な原則論としては、地方議会である県議会は、普通地方公共団体である県の意思決定機関であつて、県議会の議決すなわち県の意思決定そのものは、それ自体として外部に対し意思が表示されるものでもなく、従つてまた外部に対して直接法律上の効果を及ぼすものでもない。意思決定機関の意思決定である議決がまずあり、この議決に従つて執行機関である知事が執行することによつて、外部に対し県の意思が表示され、外部に対してはじめて法律上の効果を生ずることとなる。それ故、議決そのものは、行政庁の処分すなわち行政訴訟の対象となる行政処分ではなくして、知事が行政庁として行う行政処分の前提要件たる関係を有するに過ぎないものと言わなければならぬ」(最判昭和29年1月21日民集8巻1号46頁)などとして、処分性を否定する(11)。
ただし、例えば、横浜市保育園廃止訴訟で最判平成21年11月26日民集63巻9号2124頁が保育所の一部を廃止する保育所条例の改正条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとの判断を示したように(12)、例外的ではあるが条例の制定行為に処分性が認められることがありうる。
これに対し、機関意思の決定としての議決の場合で、それが直ちに対外的効力を有し関係者の権利義務を左右するものであるときは、処分性が認められ、訴訟手続上の要件さえ満たせば、取消訴訟、無効確認訴訟などの抗告訴訟として争うことができるのが基本である。議員の除名や出席停止の懲罰がその例である。他方、機関意思が法的効果を有しなければ、事実行為にとどまることになる。
また、執行機関の執行の前提となる議決についても、内部的なものにとどまり、それ自体が処分的な性格をもつことは基本的にないといえる。