2021.09.27 政策研究
第18回 中心性(その4)
市区町村と住民と地域社会
こうした流砂のような群衆としての住民は、しばしば、地域コミュニティや地域社会の結合性を前提とした自治のイメージとは合わない。むしろ、市区町村のような自治体を介さずとも、住民はそれぞれに紐帯(ちゅうたい)を持ったネットワークであることが、想定もされている。この場合、必ずしも市区町村が中心性を独占することはない。むしろ、全てが、何らかの意味で、中心性を互いに持つ(図14)。
図14
もっとも、市区町村の全体の住民が一様なネットワークを形成し、その編み目の中に市区町村が埋め込まれていることは、地方圏の小規模町村においても、人口規模から見て考えにくい。小規模市町村であっても、いくつかの集落・大字・字や小学校区や、旧町村や行政区に分かれている(図15)。こうした集落においては、住民間にある程度の編み目が存在したとしても、市区町村の住民全体を結合するネットワークは存在しない。それゆえ、市区町村は、住民や地域社会に対して、中心性を持っている。
図15