2021.09.27 政策研究
第18回 中心性(その4)
中心性・周辺性は相対的に入れ替わり得るものである。住民と自治体の関係において天動説的自治観であっても、国と自治体の関係においては地動説的自治観であることも可能である。この場合には、国を中心として自治体は国を周回し、自治体を中心として住民は自治体を周回する(図6)。自治体には都道府県と市区町村があるから、上記のとおり、一段階軌道型と二段階軌道型で整序の図柄が異なってくる。
図6
二段階軌道型の場合には、図柄は段階的に整序される。国の周りを都道府県が周回し、都道府県の周りを市区町村が周回し、市区町村の周りを住民が周回する(図7)。このときには、都道府県には固有の住民との直接関係は生じないで、あくまで、市区町村を媒介して関節関係を持つことになる。あえていえば、都道府県は住民を持たない、ということもできる。少なくとも、戦前の府県制においては、府県に住民が存在するのかどうかは明確ではなかった。しかし、戦後の制度では、都道府県にも住民は存在している。ただ、その場合でも、都道府県民という存在は、域内市区町村民の集計体でしかないかもしれない。実際、現実においても、都道府県は都道府県民の名簿(住民基本台帳)を自らは持っていないのである。
図7
一段階軌道型の場合には、国の周りを都道府県も市区町村も回る。自治体を中心として住民が回る場合、一体どのように位置付けられるのかは、難解である。非常に単純に考えれば、都道府県を中心として都道府県民が周回し、市区町村を中心として市区町村民が周回する整序の図柄になろう(図8)。もっとも、この場合には、現実の特定個々人は、市区町村民であるとともに、同時にある都道府県民でもあるので、一体どこに、当該特定個人が位置付けられるのかは、理解困難である。
図8
一段階軌道型において、端的に、住民は都道府県の周りを、周回しているのかもしれない(図9)。このような位置付けは二段階軌道型においても可能である(図10)。住民は、市区町村と同じように、ともに都道府県の周りを周回する。これらのように位置付けると、むしろ、都道府県と住民の間で固有の直接関係ができそうである。実際、住民基本台帳ネットワークでは、都道府県段階にサーバーが置かれている。
図9
図10