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2021.09.27 議会改革

第22回 議員の職務の公正性と兼業禁止・除斥

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4 自治体議会の権限と公正性

 自治体議会については、執行に関わる様々な権限を有しており、そのことが自治体議会の性格論に影響を与え、あるいは議員等につき特別の定めが設けられる理由ともされている。請負禁止や除斥についても、議会の扱う事件が直接的・具体的なものであることなどに関係する。
 特に、議員の請負禁止については、長、副知事・副市町村長、委員会の委員・委員と同様の取扱いとなっているものである。他方、国の場合には、国会議員だけでなく、国務大臣、副大臣、大臣政務官等の行政の政治職にも法律上はそのような規定はない(28)。都道府県知事については、戦後、それまで官吏服務紀律が適用されていたところ、官選から公選とされた際に請負禁止が規定されたという経緯がある。これらのことを考慮するならば、自治体の政治職は国の場合よりも一般職員にやや近い取扱いとなっているとみることもできないわけではなく、自治体議会議員も同様である。
 そして、このような義務が自治体の場合にのみ存在することについては、議会審議や行政の対象となる事案との距離の近さ、権限行使の具体性などを踏まえ、議会の審議・議決や事務の執行が公正に行われるようにするための法治国家的な観点からの義務と解することができるように思われる。その点では、それらはそれなりに合理性をもつとみるべきだろう。
 ただ、請負禁止が、自治体議会の議員にとって論理必然的なものというわけではなく、また、それが議会の個別の権限と裏表の関係にあるわけでもない。
 これらに関連して、町村議会研究会報告書の論理には疑問もある。すなわち、同報告書では、①自治体議会の議決事件の範囲が徐々に拡大し、重要な契約の締結や財産の取得など、国会が議決事項としていない事項についても議決対象とするに至っていることを踏まえ、議員としての活動の信用を高め、契約締結に関する疑義をなくすなどの観点から議員の請負禁止が設けられている、②多種多様な議決事項がある場合、議員としての活動量が多くなり、相応の専門性も求められるため、より一般の有権者が議会に参画しやすくなるよう、個々の契約締結や財産処分などについて議決事件から除外可能とする仕組みが考えられる、③議会が個々の契約等について議決を行わない場合には請負禁止の要請は相対的に低くなることから、これを緩和することが考えられるといった認識を示している。しかしながら、そもそも議決事項が多種多様であれば一般住民が議員になりにくくなるとの前提の当否については議論のあるところであり(29)、契約等の議決権限と引き換えの請負禁止の緩和についても両者の関係や議会のチェック機能の面から慎重な検討が必要だろう。
 この点につき、同報告書では、「契約締結や財産処分などについては、条例・予算・決算などの議決を通じて、総体として議会が一定の団体意思決定機能や監視機能を発揮できる」とするとともに、代替的適正確保スキームとして住民監視とそのための議員関係企業等と一定額以上の契約を締結した場合の契約関係事項の公表の義務付けを提示する。しかし、条例・予算では個別の事業等まで定まっているものではなく、予算は包括的な審議・議決、決算は事後の責任解除にとどまり、それらによって契約や財産処分等についてどの程度チェックできるのか疑問もあり、また、代替的適正確保スキームとしての契約関係事項の公表による住民監視というのも、それだけでは効果は未知数である。
 すべての契約や財産の取得・処分を議会の議決事項とするのは現実的かつ妥当ではないとしても、重要な契約締結や財産処分等について、恣意等が排除され、その適正が確保されるためには、議会の公開の場に情報が出されて議論されることで透明化が図られることが大事であり、住民自治の観点からも望ましいともいえる(30)。比較法的に見ても、重要な契約締結や財産処分等を自治体議会の議決の対象とするのは珍しいことではなく、また、現代行政においては、給付行政や民間化の拡大などに伴い、契約の多様化と重要性が増し、契約に対する民主的統制の強化も問題とされている中で、議員のなり手確保という別の目的から、契約や財産に関する議会の権限を後退させることの適否が問われざるをえないのではないだろうか(31)
 他方、請負禁止の意義として、議会の議決の対象外の契約や財産処分等に関しても議員が間接的に及ぼす影響力の排除を指摘する議論もあり、結局、個別の契約や財産処分等が議決事件であろうがなかろうが、何らかの利害や意図をもつ議員による口利きや介入が生じうることは否定できない。その点では、契約や財産処分等を議決事件から外せば、請負禁止が不要となるとは限らないともいえる。
 請負禁止を廃止するなら個別の契約・財産処分等の議決事件からの一律除外が必要というのはやや議論を単純化しているきらいはあるが、その一方で、規模の小さい自治体ほど、兼業議員の割合が大きくなるとともに、自治体と経済的な関係をもつ者も増えてくることを考慮するならば、請負禁止が議員のなり手に影響しうることも否めない。なかなか妙案はないが、この問題については、議会やその権限の基本的なあり方から考えていく必要があることも確かだろう。
 次回と次々回は、このことなども踏まえ、議会の権限について改めて考えてみたい。
 

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