2021.09.27 議会改革
第22回 議員の職務の公正性と兼業禁止・除斥
(2)兼職禁止の緩和を求める議論と動き
さて、この兼職禁止についても、議員のなり手確保などの関係から、見直しが議論されてきた。
この点、公務員の自治体議会議員との兼職に関し、第29次地方制度調査会の2009年6月の「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申」(以下「29次地制調答申」という)は、「公務員が地方議会の議員として活動することは、行政分野に通じた人材が議員として活動することとなり、有益な面があることから、公職への立候補制限の緩和や、地方公務員と当該地方公務員が所属する地方公共団体以外の団体の議会の議員との兼職禁止の緩和などの方策が必要ではないかとの意見がある」として引き続き検討課題とすべきとした。また、町村議会研究会報告書においては、集中専門型では公務員の立候補退職後の復職制度を設けること、多数参画型では他の自治体の一般職の職員が在職のまま議員活動従事を可能とすることを打ち出したほか、32次地制調答申でも、公務員の立候補制限や地方議会の議員との兼職禁止の緩和は、議員のなり手不足を解消するのに有用な方策の一つであるとして、行政の中立性・公平性等の要請にも配慮しつつ、引き続き検討する必要があるとしている。
公務員の兼職禁止の緩和については、公務員の職務の公正な執行、政治的行為の制限、職務専念義務などとの関係もあり、いかに公務員法制と整合的な仕組みを構築できるかが問われることになるが、議員のなり手の確保ということだけでなく、働き方改革との関係から民間企業での副業解禁の流れなどがあることも考慮するならば、公務員と議員の兼職や公務員の立候補制限の緩和・復職制度について、様々な問題や課題は指摘されうるとしても、より具体的な検討を進める状況となってきているようにも見える。
このほか、前回(本連載第21回)も触れたように、議員と副知事・副市町村長等の特別職との兼職の許容のほか、選挙で選ばれる公職の兼任が広く認められているフランス、あるいは上述の戦前・戦後直後のかつての日本の制度を踏まえて、公選職の兼職や現職のままでの他の公選職への立候補の許容を提案する議論も見受けられる。これらは、選挙に立候補することのリスクの軽減、政治における人材の調達・育成訓練・適正配分などにもつながるとの考え方によるものだ。