2021.09.27 議会改革
第22回 議員の職務の公正性と兼業禁止・除斥
(3)請負禁止と議員のなり手確保
自治体議会議員の請負禁止については、小規模市町村での議員のなり手不足の背景の一つになっているとして、その緩和を求める議論や動きもある。
例えば、総務省内に設けられた「町村議会のあり方に関する研究会」の2018年3月の報告書(以下「町村議会研究会報告書」という)では、「小規模市町村においては、人口が少ないことに加え、事業所も限られていることから、公務部門の人材や市町村との取引関係がある事業者等が議員になり得ないことによる実態的影響が大きい」と指摘した上で、個々の契約締結や財産処分等について議決事件からの除外を可能にする仕組みを設け、議会がその議決を行わない場合には請負禁止を緩和することが考えられるとしている(14)。ただ、緩和の前提となる契約締結等の議決事件からの除外ということについては、議会が権限の一部を失い、長単独の決定事項となることから、別途その公正性を担保する仕組みの必要性のほか、それが民主主義や長と議会の権力構造などの面から妥当かどうかも議論となりうる。
他方、議員のなり手不足から一時は住民総会なども検討していた高知県大川村では、2019年に、村民が立候補しやすい環境を整えることで議員のなり手不足を補うことを狙いとして、「大川村議会議員の兼業禁止を明確にする条例」を制定した。条例では、地方自治法92条の2の「請負」の解釈として、村から補助金の交付を受けて事業を実施すること、指定管理者の指定を受けて公の施設を管理することなどは請負に該当しないと明記するとともに、村長が「主として同一の行為をする法人」に該当しないとされた法人名を毎年度議会に報告した上で公表するとしている。
総務省平成30年4月25日通知「地方議会に関する地方自治法の解釈等について」も、議員又は議員が役員等を務める企業等が、当該自治体から地方自治法232条の2の規定による補助金の交付又は244条の2第3項の規定による指定管理者の指定を受けることについては、前者は贈与に類するものであり、後者は議会の議決を経た上で自治体に代わって公の施設の管理を行うものであり、特段の事情がある場合を除き、いずれも当該自治体と営利的な取引関係に立つものではないため、請負に該当するものではないとしている。
これらの動きを受け、第32次地方制度調査会の2020年6月の「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」(以下「32次地制調答申」という)では、法人請負については、その請負が当該法人の業務の主要部分を占めるものに限って議員がその取締役等となることが制限されていることを踏まえ、個人請負に関する規制について、透明性を確保する方策とあわせて、その緩和について検討するとともに、議員についても、自治体に対して請負をする第三セクターの取締役等を兼ねることができる長等と同様になるよう請負禁止を緩和することも、監視機能の確保に留意しつつ検討すべきとする(15)。
これらを背景に、自民党は、自治体と取引がある個人事業主も、取引が一定額以下なら議員との兼業を可能にすることを内容とする地方自治法改正案の概要を取りまとめ、国会への提出を目指している。取引額の上限は政令で定めることとされ、年間300万円が想定されているようだ(16)。
請負禁止の緩和が、実現するのかどうか、また、それがどのような形のものとなり、実際にどのような効果や影響をもたらすことになるのか注目されるが、いずれにしても、議員の兼業と自治体との関係については、透明性が確保されることが重要であり、情報の公開などの措置を講じていくことも必要となってくるのではないだろうか(17)。