2021.09.10 議会運営
第79回 議員報酬の引上げと予算措置/違法議決に対する議会の訴えの提起
違法議決に対する議会の訴えの提起
議会が長の予算の提出の権限を侵害する増額修正を行ったとして、長が法176条4項に基づき再議に付したが、議会は同様の増額修正を再度行った。そのため、長は法176条5項に基づき知事に審査申立てを行った結果、知事裁定で議会の違法議決が認定された。それを不服として議会が法176条7項の規定により裁判所に出訴する場合、議会の議決を必要とするか。
法176条7項の規定により出訴する場合は、地方公共団体の機関である議会が一内部機関としての資格において訴訟当事者となるため、法96条1項12号の規定に基づく議決は必要ない。
【法176条】
⑦ 前項の裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあつた日から60日以内に、裁判所に出訴することができる。
【法96条】
①12 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項(同法第38条第1項(同法第43条第2項において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
しかし、議会は複数の議員で構成された合議制の機関であり、議会として出訴するという意思を決定するためには、会期中における本会議での出席議員の過半数議決により決する必要がある。それゆえ、議会として出訴する場合には、行政実例昭和25.11.10のとおり議会の議決を必要とするといえる。
【○議会を当事者とする訴えの提起(行政実例昭和25.11.10)】
問1 本号は地方公共団体がその当事者である「異議の申立、訴願(現行法では審査請求その他の不服申立て)、訴訟(現行法では訴えの提起)、和解、斡旋、調停及び仲裁に関する」事件につき議会の議決を経べき旨の規定であるが、この地方公共団体のうちには地方議会がその当事者である場合をも含むものと解してよいか。
2 若し議会自身当事者である場合は本号に該当しないとすれば議会の訴訟(現行法では訴えの提起)については議決を要しないと解してよいか。
3 前項の場合でもなお議決を必要とすればいずれの条例に基き議決するものであるか。
答1 含まない。
2 機関意思を決定するための議会の議決を要する。
3 地方自治法上議決を要する旨の明文はないが、合議体としての議会がその意思を決定するためには、当然議決(決定又は選挙の方法を用いる場合もある。)の方法を用いる必要があり、本件の場合にも第118条の規定の適用があるものと解される。