2021.09.10 議員活動
第12回 信頼と議員
3 政府(議会・行政)に求められる「二重の信頼」
次に、政府(議会・行政)に求められる市民との信頼関係と、政府以外のアクターに求められる市民との信頼関係には、違いがあるのであろうか。松下圭一は、政府政策とは基本法手続によって正統性を持ち、権限・財源を確保する政策ということになる。それだけに、政府政策には、個人、また団体・企業などとは異なる政府責任が加重されるという(松下 1991:138)。
このことは、政府に求められる信頼と政府以外のアクターに求められる信頼の相違点を表している。政府以外のアクターが行う公共政策の原資と異なり、政府政策の主な原資は市民一人ひとりは合意していなくとも納める必要のある税金である。税金を円滑に確保するためには、市民と自治体政府の意思を決定する議会(議員)・執行する行政(首長・職員)との間には、「二重の信頼」が求められる(図2参照)。
出典:筆者作成
図2 政府に求められる「二重の信頼」
4 政策原資が効果を発揮する条件としての信頼
ところで、松下は、政策は、原資としての精神価値=名誉、物質価値=富の付与・略奪をその手法とするが、このとき、政治ないし政府には、付与・略奪しうる価値=原資としての名誉・富の《蓄積》が不可欠であるとする(松下 1991:125)。もちろん、その前段階として、政治ないし政府から精神価値・物質価値を受けたいと思う、市民の政治ないし政府に対する信頼が不可欠となる。市民からの政治ないし政府に対する信頼がなければ、政治ないし政府が用意した付与・略奪しうる二つの価値は、効果のないものとなるからである(表1参照)。
出典:筆者作成
表1 「政策原資」と「市民の政治ないし政府に対する信頼」の有無と効果
5 「市民の様々な活動」が政府アクター(議会・議員・首長・職員)の信頼につながる
次に、市民の様々な活動と信頼について考えてみよう。松下は、市民活動は、政治活動だけでなく、ピクニック、スポーツ、趣味グループ、サロンなどにおけるサークル型活動の組織経験という、幅広い裾野を持つ。この幅広い裾野が日常生活で広がって、初めて、市民活動への習熟となるという(松下 1991:187-188)。
このことは、サークル型活動の組織における合意形成手順が、市民活動、政治活動における合意形成手順の習熟に役立ち、図3のように政府アクター(議会・議員・首長・職員)との合意形成や相互信頼にもつながるといえる。
出典:筆者作成
図3 市民と政府アクターにおける合意形成手順の習熟と相互信頼