地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.08.25 政策研究

第17回 中心性(その3)

LINEで送る

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

実質的な中心性の探求~地域権力構造論~

 自治体では、法制度的には、首長ほかの執行機関と議会が決定権限を持っており、その意味では、これらの機関が意思決定の中心である。執行機関が多数あるという意味では八ヶ岳型でもありえるし、首長と議会が、民主的な正統性と法制度的な決定権限の双方を有する機関である点からは、決定の中心点は二つであると見ることもできる。そうなれば、単一の中心を持つ同心円ではなく、二つの焦点を持つ楕円(だえん)として、描くことができる。
 しかし、こうした法制度的な議論を超えて、実質的な意思決定の中心または中心集団・階層・階級が存在するか、存在するとすれば誰なのか、あるいは、どこなのか、を問うことも重要である。こうした関心から始まるのが、地域権力構造の探求である。地域権力構造論とは、要するに、「誰が施政しているのか(Who Governs ?)」を問うことである。

個人か人間結合か

 地域権力構造論は、権力の担い手が「誰」であるかを特定することでもある。権力の担い手が、意思決定の中心である。推理小説の比喩でいえば、殺人の担い手である犯人を明らかにするようなものである。もっとも、「誰」という担い手が、特定の「個人」として探求しうると、あらかじめ決め切ることは、本来はできない。権力が個人に帰着できるかどうかは、実は自明なことではないからである。推理小説で犯人捜しが可能なのは、犯人は必ず誰か特定の個人とされている、推理小説(または刑事法)のお約束ごとがあるからである。その意味で、地域権力構造論でも、誰か個人を特定することである、とお約束ごとにすればよいともいえる。しかし、そのようなお約束ごと自体を、疑うこともできる。
 実際には、ある個人は、様々な他の個人と結合することによっても、権力を振るうように見える。逆に、他の個人との結合が失われれば、権力を振るうことは難しい個人も多いだろう。つまり、権力は個人に固有のものというよりは、複数または多数の個人の結合の中に存在すると見た方がよい。こうした多数個人の結合に着眼するならば、地域権力構造論も、こうした人間結合に注目することになろう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る