５　スウェーデンの地方自治制度と自治体議会

　スウェーデン王国の地方自治は、コミューン（Kommun）とランスティング（Landsting）が担っており、地方自治法によって、コミューンとランスティングは、民主主義と地方自治の原則に基づき、地方自治法又は特別法に定められる事務を処理する旨が定められている。コミューンは、日本の市町村に近い基礎的な自治体であり、その所管する事務の範囲は多岐にわたっているのに対し、ランスティングは、地域的に複数のコミューンを含むより広域的な自治体であり、所管する事務はコミューンに比べて種類が少ない。コミューンとランスティングは、それぞれ所管する地域の広さと人口規模によって行政事務を分担している対等な関係の自治体とされている。
　コミューンとランスティングは、議会を設置するものとされており、コミューン議会（kommunfullmäktige）とランスティング議会（landstingsfullmäktige）がそれぞれ最高意思決定機関とされている。議会は、事業の目標と方針、予算・課税・その他重要な財政的問題、専門委員会の組織と活動形態、委員会や起草委員会の委員等の選出、監査委員等の選出、各年度の活動報告の承認と責任解除、住民投票などに関する事項やコミューン・ランスティングにとって非常に重要な案件について議決するものとされている。
　コミューンとランスティングでは、多くの委員会が設置されるが、執行委員会は必ず設置しなければならず、その任務は、地方自治体の活動を指導調整し、他の委員会の事務を監督することである。国政における内閣に相当するもので、外部に対して自治体を代表する。委員会の委員は、議会によって任命され、通常、議会における各党の議席数に応じて比例代表的に選出されるが、委員は必ずしも議員である必要はない。このほか、議会では、国の一部の機関の運営委員会の構成員の任命も行っており、例えば、コミューン議会では地方裁判所の陪審員の任命、ランスティング議会では国の地方機関であるレーンの行政裁判所の参審員や道路委員会の構成員の任命などを行っている。
　コミューン議会は、一般に７・８月以外の毎月１回程度開かれ、夕刻から開催されるのに対し、ラスティング議会は、それよりも開催回数は少なくないが、昼間に開催されることが多い。
　議会の議員の任期は４年であり、住民による直接選挙で選ばれる。議員数は奇数でなければならないものとされ、議員定数については地方自治法において有権者数に応じて最低議席数が規定されている。
　議員に支払われる報酬には、活動経費の支弁、会議出席に係る諸費用の補填、議員活動のために他の職業の収入の一部が失われた場合の所得補償、会議出席に対する報酬などがあるが、これらの報酬はそれほど大きな金額ではない。ただし、執行委員会の委員長を務める議員にはフルタイムの議員職としての給与が支給されている。このため、大半の議員は専業ではなく、多くの議員が他の職業を兼職しているのが一般的といわれる。