2021.08.25 議会改革
第21回 日本の自治体議会を相対的に見る──自治体議会の国際比較
3 フランスの地方自治制度と自治体議会
伝統的に中央集権的性格が強かったフランスでは、1980年代のミッテラン政権以降、憲法改正を伴う地方分権改革が進められてきており、第5共和制憲法では、1条1項でフランス共和国の基本理念の一つとして地方分権が規定されているほか、第12章として「地方自治体」の章を設け、地方自治体としてコミューン、デパルトマン、レジオン、特別な地位を有する地方自治体、海外自治体などを列記し、補完性の原則について定め、地方自治体は法律の定めるところにより公選議会によって自由に運営され、権限行使のために命令(条例)を制定できることや、財政自主権などについて定めている。地方自治に関する基本的な法律事項は、地方自治体総合法典(Code général des collectivités territoriales)において総合的・体系的に規定されている。
基礎自治体であるコミューン(commune)は、現在でもその数が3万5千近くに上り、その平均人口は約1,500人、約9割が2,000人未満と規模が小さいところが多い。このため、広域行政組織(コミューン連合体)が公益施設法人として重要な役割を担っている。パリは、コミューンとデパルトマンの二重の性格をもつ自治単位とされている。また、デパルトマン(département)は、フランス大革命以降に設けられた人為的区画で、県と訳されるものであり、州と訳されるレジオン(région)は、複数のデパルトマンを包括した広域的な行政区画であり、公選議会と首長をもつ完全な形の地方自治体となったのは1982年地方分権法からである。なお、地方自治体であるレジオン、デパルトマン、コミューンの各行政区画は国の行政区画にもなっており、それぞれに国の代表者が置かれている。レジオンとデパルトマンの場合は、地方自治体の代表者はプレジダン(président)、国の代表者はプレフェ(préfet:地方長官)である一方、コミューンの場合は、地方自治体の代表者であるメール(maire)が国の代表者も兼ねる。
地方自治体の権限については、地方分権改革により拡大されてきた一方、2015年地方行政機構改革法により、コミューンのみに一般権限条項が存在することとなり、デパルトマンとレジオンについては、一般権限条項は廃止され、法が付与する権限分野に関する事務を処理するものとされている。コミューンの所管事務としては、伝統的なものとして社会扶助、道路、幼児・初等教育施設の整備と維持管理、社会住宅のほか、上下水道、葬儀、墓地、ガス、電気、廃棄物の収集、市場、と畜場などがあり、国からメールへの委任事務として司法警察、戸籍、選挙管理がある。これに対し、デパルトマンは、県道、障害生徒用交通、港湾、空港、レジオンやコミューンの地域計画や都市計画・住宅計画への関与、法定の社会扶助給付や福祉サービス、中学校の管理運営などの分野を所管し、レジオンは、経済開発、開発整備、職業訓練、高校の管理運営、都市圏を超える交通・輸送事務がその主な権限とされている。