2021.08.25 議会改革
第21回 日本の自治体議会を相対的に見る──自治体議会の国際比較
2 イギリスの地方自治制度と自治体議会
グレートブリテン・北アイルランド連合王国(イギリス)の地方自治制度は、政治社会経済の状況の変化や政権交代などに伴い、様々な改革が断続的に行われ、大きく変遷してきており、その姿を理解するのはなかなか容易ではない。
従来、地方自治体(local government)は、原則として、イギリス議会が制定する法律により個別に授権された事務のみを処理できるものとされ(1972年地方自治法(Local Government Act 1972)等)、授権された範囲を超える行為は、権限逸脱(Ultra Vires)の法理により違法になるとされる一方、国と地方自治体や同一地域内における各地方自治体間の役割分担は、基本的に分野により明確に区分されてきた。しかし、2000年地方自治法(Local Government Act 2000)により、地方自治体は、地域社会や住民の福祉の増進に関する経済・社会福祉・環境の3分野の政策を一定の制約のもとで自由に実施できることとされ、さらに、2011年地域主義法(Localism Act 2011)では、地方自治体に対し、個人が行うことができることであれば法令で禁止されていない限り行うことができる包括的な法的権限が付与された。
イギリスの地方自治体は、地域によって異なる。例えば、イングランドでは2層制と1層制が混在しており、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドでは1層制に統一されている。直接公共サービスを提供する機能がないグレーター・ロンドン・オーソリティーは、ロンドンを広域的に担う地域政府と位置付けられ、そのもとに33の基礎自治体が存在する。一方、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの自治体政府は、自治政府(devolved government)と位置付けられている(5)。
イングランドの2層制の地域は、カウンティ・カウンシル(County Council)とディストリクト・カウンシル(District Council)で構成される。カウンティ・カウンシルは日本の県に相当する広域的な自治体であり、ディストリクト・カウンシルは日本の市町村に該当する基礎的な自治体である。イングランドにおける1層制の地方自治体は、大都市圏に存在する大都市圏ディストリクト・カウンシル(Metropolitan District Council)と非大都市圏のユニタリー・カウンシル(Unitary Council)であり、県と市町村の機能を併せもった地方自治体である。イングランドの1層制の地方自治体では、消防・警察など広域の事務組合で行う事務以外のすべての事務を行うのに対し、2層制の地方自治体では、ディストリクトは住宅、廃棄物収集、レジャー・レクリエーション等の限られた事務を、カウンティは教育、社会福祉、道路等の事務を行っている。
また、ウェールズ、スコットランドの1層制の地方自治体はユニタリー、北アイルランドではディストリクトと呼ばれ、レジャー、廃棄物処理、環境のほか、都市計画、道路、経済開発、観光促進、スポーツ等に関する事務を担当している。