2021.08.25 議会改革
第21回 日本の自治体議会を相対的に見る──自治体議会の国際比較
1 諸外国の地方自治制度
諸外国の地方自治制度といっても、各国の制度は、極めて多様であり、地方団体の位置付け、規模、役割などが国によって大きく異なるだけでなく、それぞれの国におけるそのあり方や基本構造なども一様ではないなど(3)、日本のように画一的なものとなっているわけではない。
地方自治の制度については、大きく分けると、ヨーロッパ大陸型とアングロ型とがあるといわれる。これらのうち、ヨーロッパ大陸型は、フランスなどで発達したもので、統合型ともいわれ、地方は国の統治機構に組み込まれ、その事務や行政活動は大きいものの、自律性は低いとされる。他方、アングロ型は、イギリスのイングランドで発達したもので、分離型ともいわれ、地方と中央は総体的に分離し両者の権限は基本的に区別され、国も機関を設けて事務を行うことから、地方の事務・行政活動は小さいものの自律性は高いとされている。このほか、ヨーロッパ大陸型では議会と長による二元制が、アングロ型ではカウンシル制(4)などによる一元制がとられることが多いともいわれてきた。
また、近年は、ヨーロッパ大陸型についてフランスを代表例とする南欧型とドイツ・スウェーデンを代表例とする中北欧型に分ける三類型論が有力となってきていた。その場合、南欧型では、自治体は憲法上の位置付けを与えられているものの、その活動は国の地方出先機関の援助や指導に依存し、その統制・監督を受ける傾向が見られ、中北欧型では、自治体の地位は憲法で保障され、比較的高度の政策形成上の自治権と財政上の独立性を有するとされる。これに対し、アングロ型では、自治体は憲法上の地位を有しておらず法律によって創設されるため地方自治の制度上の保障は弱い一方、国と自治体の事務は分離・峻別(しゅんべつ)される傾向が強く、通常の事務に関する限りでは国からの高度の自治権を有しているとされる。
もっとも、以上の類型や相違は相対的なところがあるだけでなく、近年の活発な改革を通じて制度等が大きく変容してきている国もあり、その違いはより相対化してきている。
なお、日本の地方自治制度は、明治時代にプロイセン(ドイツ)の制度をモデルにしてつくられ、戦後はアメリカの制度の影響を受けたものの、現行の制度だけ見れば中北欧型に属するといわれる。
他方、国家の基本的な形態として単一制と連邦制があり、連邦制の場合には、地方自治は、州と州内の地域団体との関係としてとらえられることになるが、中には州を地方政府の一つと見る考え方もある。また、地方への分権化は、ヨーロッパ地方自治憲章を採択したヨーロッパを中心に世界的な潮流ともなっており、そこでは、連邦主義的な要素を取り入れようとする傾向なども見受けられる。