2021.08.25 議会改革
第21回 日本の自治体議会を相対的に見る──自治体議会の国際比較
6 アメリカの地方自治制度と自治体議会
連邦制国家であるアメリカでは、合衆国憲法は地方自治制度に関して特段の規定をもたず、各州の権限として留保されている(州の創造物(Creature of the State)としての地方政府(Local Government))。したがって、カウンティ、シティ等の地方政府は、各州の憲法・法令等により設立されており、地方自治制度も各州によって異なっており、実に多様かつ複雑なものとなっている。
アメリカの地方政府をめぐっては、ディロンのルールとホームルールの相対立しうる二つの考え方がある。ディロンのルールは、1868年にディロン判事が下した判決によるもので、地方自治制度は州の創造物との考え方を背景に、地方政府は①明確に許可された権限、②具体的に明示されている権限、③地方政府の運営にとって不可欠な権限について遂行可能とするもので、権限に関する表現に不確かな点がある場合には州の統制に有利な解釈がなされることになる。他方、ホームルールは、州政府など外部からの統制を最小限にとどめ、地方政府が自らの問題を自らが解決できる権限をもつとするもので、ホームルールが採用されている地方政府は、憲章の採択・改正のほか、条例制定や法的効力を伴う行政上の意思決定を行う権限を有することになる。ホームルールに関する規定は、州憲法に置かれることが多いが、州の法律で規定されていることもある。その規定は多様であるが、地方政府に対して一定の自由を認めており、それを受け、憲章には地方政府の職務権限、その権限を遂行するための組織、意思決定手続など地方政府の骨格が規定されることになる。地方政府は地方自治の実現のためホームルールを求めてきたのであり、ホームルールはアメリカの地方政府の主な特徴となっており、民主主義の点からも重要な意義をもっている。
州において、地方政府を創設する手続としては、州憲法又は州法で規定し、州議会の承認を要件としていることが多い。
地方政府の区分としては、一般目的の地方政府として、カウンティ(County)3,031団体、タウンシップ(Township)1万6,253団体、シティ(City)、バラー(Borough)、タウン(Town)、ビレッジ(Village)などの自治体(自治体法人)(10)(Municipality)1万9,495団体があり、特別目的の地方政府として、小中学校教育を実施するための学校区(School District)1万2,754団体、特定の事務を行うために設けられる特別区(Special District)3万8,542団体などがある(11)。
カウンティは、州内最大の広域地方政府であり、ごく一部でカウンティのないところもあるが、州内の区域はいずれかのカウンティに属する。カウンティは独立の地方政府としての性格と州の出先機関としての性格を併せもつ。
また、タウンシップは、カウンティが分割・区分された政府単位であり、主に自治体が設立されていない未法人化区域において行政サービスを提供するものである。他方、シティ・ビレッジなどの自治体は、住民の発意により設立・法人化するもので、区域内の住民に対してより高度な行政サービスを提供するとともに、他の地方政府と比べて広範な自治権が認められているものである。