2021.07.28 政策研究
第16回 中心性(その2)
同心円的行政組織
第2に、首長の中心性をもたらす要因には、首長が執政として、各種の行政組織を統括し、総合調整することがある。つまり、行政組織や行政職員は、首長を最高責任者として、その指揮監督下にある補助機関となる。通常、このような行政組織は、ピラミッド型の階統制とされ、組織図は三角形的にイメージされることが普通である(図3)。しかし、首長を単一の中心とする同心円状に図化することもできる(図4)。通常のピラミッド型の組織図ではなく、同心円型で描いた方が、首長が行政組織の中心であることがイメージしやすいだろう。
図3 三角形型(富士山型)
図4 同心円型
もっとも、教科書的には執行機関多元主義とも呼ばれ、長(首長の法制的な表現)は委員会・委員など数ある執行機関の中の一つにすぎない、という制度理解もある。三角形イメージでいえば、単一三角形型の富士山型ではなく、複数三角形型の八ヶ岳型となる(図5)。同心円状でイメージするならば、ピザの切り分け状となる(図6)。実際、執行機関としての長から独立して、教育委員会・選挙管理委員会などの委員会や監査委員は職務を遂行する、ことになっている。
図5 八ヶ岳型
図6 ピザ型
しかし、首長制という理解は、多数の中の一つの執行機関でしかない「長」が、実質的は、他の執行機関の全てを差配する「首長」であることを含意する。制度的には、執行機関が職務を遂行する上で不可欠な財源と権限について、予算提出権と条例案提出権を首長が握っているので、他の執行機関は首長に依存せざるをえない。
さらに、執行機関にとってもう一つの不可欠な職員について、制度的には各執行機関は任命権(人事権)を独自に持っているものの、実態としては、各執行機関が独自に職員採用をしているのではなく、自治体全体が採用した職員集団からの異動・配置転換に頼っており、首長が人事権を実質的には掌握している。同心円状でイメージするならば、切り分けに失敗したピザ型である(図7)。
図7 切り分けに失敗したピザ型