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2021.07.28 政策研究

第16回 中心性(その2)

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県都・道都と府・都

 同様に、自治体も、自治体の区域という「面」を支配しているが、それを、どこか中心の「点」から支配すると見ることはできる。県や道の場合には、県庁・道庁所在市のことを「県都」、「道都」などと呼ぶことがある。旧国制の場合には、「国府」と呼ばれたこともある。「府中」とか「国府台」という地名は今もある。「県都」、「道都」は、近代国家の国にとっての首都に対比できる県道庁所在都市の呼称である。
 なお、東京都・大阪府・京都府においては、「都都」、「府都」などと呼ぶことは、通常はない。なぜならば、これらはもともと「三府」とか「三都」と呼ばれる。これらの府・郡は、大都市であるがために、面的になってはいるものの、国全体にとっての支配拠点である「点」を意味したからである。
 1868年の江戸体制の瓦解(いわゆる「御一新」、「明治維新」)の直後には、江戸府・箱館府・越後府・甲斐府・神奈川府・度会府・京都府・大阪府・奈良府・長崎府として、各地に「府」が設置された。旧江戸体制の公儀政権の直轄奉行支配地や開港地が「府」となったといわれる。例えば、江戸町奉行、大坂町奉行、京都町奉行、新潟奉行・佐渡奉行、長崎奉行、箱館奉行、山田奉行(宇治山田=伊勢・志摩)、奈良奉行、神奈川奉行・浦賀奉行などと対応しているように見える。もっとも、日光奉行、駿府町奉行など、江戸体制には重要でも明治政権にとっては重要ではないところには、対応する府は置かれなかった。なお、これらの大半は、翌1869年に「県」という「地方」的な「面」に位置付け直されるが、東京・京都・大阪の「三都」は、「府」のままに存続した(1)

市区町村の場合

 市区町村の場合には、市区役所・町村役場の所在地のことを、「市都」、「市府」と呼ぶことはない。というのは、市区町村よりも小さい「面」または「点」を、公式に表示する単位がないからである。確かに、市区役所・町村役場には、住所表示は可能であって、「○○市△△(町)X-Y-Z」などという表記はある。また政令指定都市の場合には、「○○市△△区□□(町)X-Y-Z」などと表記される。しかし、これらの「△△」や「□□」は、単なる住所地番のための範囲を示す標識符号であって、「△△」や「□□」が一体性と凝集性のある単位としては理解されていないからである。いわば、市区町村は「原子(atom)」であって、それを、さらに小さい「点」に分解できない、というような見方である。
 しかし、現実には、市区町村といえども、一様な「面」でもなければ、それ以上分割できない「原子」でもない。比喩的にいえば、「原子」はさらに、「陽子」、「電子」、「中性子」に分解できるし、さらに、クォークやレプトン(ニュートリノや電子など)という「素粒子(elementary particle)」に分解される。このように微視的に分割することは、無限の営みかもしれない。比喩はともあれ、実際の市区町村では、ある時間・ある空間において、市区町村全域に作用を及ぼす決定がなされるので、市区町村をさらに小さい決定の「点」に分解できる。
 多くの場合、市区役所・町村役場という物理的空間において決定がなされているが、単なる箱物としての物理的空間それ自体が決定の「点」を構成するわけではない。実際、リモートワークでの在宅勤務や、出張先や現地・臨戸訪問での業務、災害避難先での判断のように、物理的に役所・役場庁舎に縛られているわけではない。むしろ、市区町村という自治体政府の意思決定「空間」(権限「空間」・権力「空間」)という、バーチャル上、あるいは、言語上の「空間」での決定「位置」の所在となる。それが、市区町村の中心性であり、「市区町村都」とでも呼べるべき存在である。そして、実は、首都や県都のように、一見すると特定の都市という物理的空間によって示されるかのごとき、国や都道府県の中心性も、実は、こうした意思決定空間の中の中心性が、その本態なのである。

単一中心性~首長制論~

 市区町村を含め、日本の自治体は、首長を中心として運営されているため、首長制と呼ばれることがある。制度的には、いくつかの含意を持っている。
 第1に、首長が独任制執政機関であることを指す。つまり、内閣制度や理事会制度・参事会制度のように、合議制の執政機関ではないので、一人の個人が明確な中心性を持つことである。もっとも、意思決定には合議が必要で、首相の一存では決定できることは限られるという合議制の典型である内閣制度も、内閣の首長は首相であり、内閣のメンバーである閣僚は首相が任免しているので、人事的には独任制的に見ることもできる。逆に、独任制である首長も、実際の運営では、幹部職員(三役や部長たち)などと庁議その他の合議をとることもありえる。また、首長と三役などを合わせて「理事者」と呼ぶ慣例があるが、これは、実質的には理事会制度に近い面もあるという理解を示す。

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