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2021.07.28 議会改革

第20回 地方議会・自治体議会の歴史から学ぶ

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 これを受けて内務省が作成した草案においては、議会関係では参事会制度の廃止、議会による国政事務に関する報告の要求・意見、調査権の付与、常任委員会・特別委員会制度の創設などの項目が付け加えられたが、草案についてはさらにGHQの側から54項目にわたる修正意見が示された。また、地方自治法案の作成過程では、国の特別地方行政機関の整理が焦点となり、内務省と大蔵省をはじめとする各省の意見が対立するが、結局、存置されることとなり、国政事務を大幅に都道府県に委譲して地方分権を拡充するには至らなかった(16)。  なお、1947年1月の閣議において内務大臣から説明がなされた「地方自治法案要綱」を見ると、「その他議会の権限に関する規定につき概ね国会法の原則に準じ整備すること」(下線筆者)とされている。議会の組織・運営の基本的なルールは既に市制・町村制や府県制に規定があったとはいえ、これも、地方自治法における議会に関する詳細な規定につながる一因となり、会議規則の位置付けをゆがめる遠因となった可能性もある。
 さて、GHQの修正意見の多くは政府原案では取り入れられず、衆議院の審議段階で改めて37項目の修正意見が示され、それらの多くが衆議院と貴族院における修正として取り入れられることとなった。議会関係の主な事項としては、①長その他執行機関の職員は議会の請求がなければ議会に出席しないこととし、説明書によりその意思を伝える方法をとること、②議会の議決が違法又は越権の場合には長は裁判所に出訴できることとし、議会の議決が公益を害する場合における原案執行制度は廃止すること、③議会不成立の場合の専決処分については内務大臣・都道府県知事の指揮を請わないで行うこととするとともに、議会の議決により長が専決処分ができる事項の範囲を制限し議会への報告の手続を設けること、④暫定予算の制度を認めることなどを挙げることができる(17)
 地方自治法は、1947(昭和22)年5月3日、日本国憲法とともに施行された。日本国憲法では、地方自治の章が設けられ、議事機関として議会を設置すること、議会の議員はその地方公共団体の住民が直接選挙すること、条例制定権などが明記された。他方、地方自治法については、GHQとの間で十分な詰めがなされていなかったことなどもあって、その修正意見に基づき、同年に改正されることとなった。
 いずれにしても、以上により、新しい地方自治の制度がスタートし、議会は、自治体議会として装いを新たにすることになったのである。そして、その直後に、地方行政に対して絶大なる権力をもっていた内務省は解体されることになるとともに(18)、さらにGHQの指示に基づく地方自治法の手直しが続くこととなった。
 占領下での地方自治法改正は1947年、1948年、1950年の3回ほど行われているが、議会についてはその強化のため、1947年改正では条例の規定の整備、長の提出権限を侵さない範囲での予算増額修正権の明記、100条調査権における出頭拒否・偽証等の罰則規定の整備、議会図書室の設置、1948年改正では議決事項の追加・整理、議員と地方公共団体の有給職員との兼職禁止などの改正が行われる一方、長の一般的拒否権の制度が導入されている。また、1950年改正では行政委員会の事務の管理・出納に関する議会の検査権限の追加などのほか、国会での修正により議会事務局の法制化、議会解散後の2回目の長の不信任議決の同意要件の緩和(4分の3以上から過半数に)が行われている。
 いずれにしても、当時においては、自治体議会を活性化し、その積極的な活動と円滑な運営を図ることが、地方自治にとって重要との考え方が強かったといえる。

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