地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.07.28 議会改革

第20回 地方議会・自治体議会の歴史から学ぶ

LINEで送る

2 選挙権・被選挙権の拡大

 地方議会の議員が全国的に初めて公選されるようになったのは、古くは1878(明治11)年の府県会規則による府県会議員選挙からであり、町村会議員についてもこれに準じて選挙が行われた。そこでは、選挙権及び被選挙権の要件として、一定の期間居住と納税の事実が必要であったほか(12)、選挙権の場合が満20歳、被選挙権の場合が満25歳の男子とされ、選挙区は郡区の区域によるものとし、議員任期は4年で2年ごとに半数交代制であった。
 そして、日本における選挙制度は、実質的には、1888年の市制町村制の施行から始まることとなった。
 市制町村制では、住民と公民とが区別され、市町村政に参与できるものは公民のみとされ、公民となるための要件としては、①満25歳以上の帝国臣民で公権を有し一戸を構えている男子であること、②2年以上市町村の住民となり当該市町村の負担を分任してきたこと、③当該市町村において地租を納め、又は直接国税年額2円以上を納めていることが必要とされた(13)。そして選挙人をその納税額の多小に応じて、市においては3級に、町村においては2級に分けて、各等級ごとに議員定数の3分の1あるいは2分の1を選挙するいわゆる等級選挙制が採用された。投票は無記名投票であったが、被選挙人については同じ等級に属する者である必要はなかった。
 なお、その後、1921(大正10)年の市制・町村制の改正により選挙権が拡張され、2年以上その市町村において直接市町村税を納めればよいこととなる一方、等級選挙については、市会議員の3級選挙制が2級選挙制に改められたのに対し、町村会議員については等級選挙制が原則廃止された。
 他方、1890年の府県制では、府県会議員の被選挙権の要件は市町村会議員のそれよりもさらに厳重であり、府県内市町村の公民のうち選挙権を有し、かつ、その府県において1年以上直接国税10円以上を納めることを必要としたが、その選挙は、選挙人の直接選挙ではなくて、郡会と郡参事会及び市会と市参事会が会同して選挙する複選の方法によることとされた。その後、1899(明治32)年の改正により、有権者(市町村の公民でその議会議員の選挙権を有し、かつ、その府県内で1年以上直接国税3円以上を納付した者)が直接選挙することとされるとともに、1922(大正11)年の改正では、選挙権の要件である国税納税額の制限を撤廃して、単に府県内において1年以上直接国税を納めればよいこととされ、かつ、被選挙権の納税要件においても納税額の制限が廃止された。
 ところで、一定年齢以上の男子に選挙権を認めることを求める普通選挙運動は、1890年代において、資本主義の発展に伴う社会問題の発生を背景に、社会運動として現れ、普通選挙期成同盟会が設立されるなどした。
 やがて大正デモクラシーの高まりとともに普通選挙運動も広がりを見せ、帝国議会にたびたび法案が出されたものの否決される。1923年9月の関東大震災後、第2次山本権兵衛内閣が人心収攬(じんしんしゅうらん)のため普通選挙法の実現を打ち出すことで、政治日程に上るようになり、翌年1月の清浦奎吾内閣(官僚内閣)の発足を受け、憲政会、国民党、政友会は第2次憲政擁護運動を展開し、その中心的な要求として普通選挙法が据えられた。総選挙での勝利を受け、加藤高明を首班とする護憲3派内閣が発足し、1925年に、治安維持法の制定と引き換えに、衆議院議員選挙法改正(普通選挙法)が成立するに至った。ただし、それは、満25歳以上の男子だけを対象とするものであり、女性についてはさらに第2次世界大戦後まで待たなければならなかった。
 地方議会議員の選挙については、これを受け、1926(大正15)年の市制・町村制・府県制の改正により、納税要件を撤廃して普通選挙制度が採用されるとともに、これと同じ思想に基づいて市の2級選挙制(町村会議員についても特に必要があれば2級選挙とすることができることになっていたもの)を廃止した。また、府県会・人口5万以上の市の市会の議員選挙について候補者制度を採用し、選挙手続の合理化や選挙運動の規定の整備が図られた。立候補制度、選挙運動の制限、罰則などの現在の制度はおおむねこの時代に整備されたものを引き継いできたものでもある。町村会の議員選挙で候補者制度が採用されたのは1943(昭和18)年となってからである。
 そして、戦後の民主化として1946(昭和21)年の市制・町村制・府県制・東京都制の改正により、6か月以上引き続いて市町村の区域内に住所を有している日本国民で年齢満20歳以上の者に対して、男女を問わず選挙権を与えることとし、完全普通選挙が実現されるに至った(この改正で、市町村長も選挙人による直接選挙で選ばれることとなった)。
 ここに、議会は、住民を真に代表する民主的な機関となったのである。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る