2021.07.28 議会改革
第20回 地方議会・自治体議会の歴史から学ぶ
(2)市制町村制・府県制と議会制度
地方議会が近代議会制度としての体裁をある程度整えることとなったのは、市制町村制と府県制による。これらにおいては、市町村会や府県会の議員の選挙、組織、議決事件・権限、運営等が規定された。
すなわち、1888年には、市制町村制(9)が制定され、市町村に独立の法人格を認め、公共事務・委任事務を処理するものとされるとともに、条例・規則の制定権が付与される一方、市町村会は、公民の等級選挙による公選議員で構成し、市町村を代表し、市町村に関する一切の事件及び委任された事件を議決することとされた(10)。市会は人口段階に応じて36人から60人、町村会は人口段階に応じて8人から30人の議員よりなることとされ、市会の場合には60人を超えない範囲で条例により議員数を増減することが、町村会の場合には条例により減員することが認められた。市町村会議員は、名誉職とされ、任期は6年で3年ごとの半数改選(11)。また、市会議長は毎年初めに市会で互選、町村会議長は町村長が務めることとされるとともに、市町村会は会議の必要があるごとに議長が招集するが、議員の4分の1以上からの請求がある場合や市長又は市参事会の請求がある場合には招集しなければならないものとされていた。
なお、市町村の執行機関は、市にあっては市長及び市参事会(市長・助役・市会で選挙された名誉職参事会員で構成)、町村にあっては町村長とされ、市長は市会の推薦した者のうちから内務大臣の選任、その他は市会・町村会での選挙によるものとされた。
他方、1890年には、府県制と郡制が制定され、府県・郡について、国の行政機関ではなく、地方公共団体とされるとともに、府県会については、府県内の郡市からの複選制選挙による議員で構成し、予算の決定、決算報告の認定、府県税の賦課徴収方法の決定、府県不動産の売買・譲渡・譲受等、府県有財産の管理・営造物の維持方法の決定などの6項目の議決がその権限とされた。府県会議員は、名誉職とされ任期は4年で、2年ごとの半数改選とされる一方、府県会については、府県知事の招集により毎年1回秋季に30日以内の通常会が開かれるほか、必要に応じ7日以内の臨時会が開かれることとされた。
なお、府県の執行機関は、知事(国の機関)及び府県参事会(知事・高等官・県会から互選された名誉職参事会員で構成)であった。
一方、郡は、課税権をもたないほかは府県と同様とされ、郡会は、町村会選出議員と高額納税者(大地主)互選議員で構成し、郡参事会は郡長と名誉職参事会員で構成された。
府県会については、その権能は限定的であり、また、府県・郡・市に置かれた参事会は、戦前の制度の特徴をなすものであり、府県会や市会の委任事項・急施事件等の議決、知事・市長の諮問事項等に関する意見陳述など、議会に代わる権限を有する機関でもあった。