2021.07.28 議会改革
第20回 地方議会・自治体議会の歴史から学ぶ
さて、戦後、日本国憲法が、その94条において自治体の自治立法権を保障したことにより、条例の地位と役割は飛躍的に高まることとなったが、1947年制定時の地方自治法の規定は、次のとおりであった。
第十四条 普通地方公共団体は、法律の範囲内において、その事務に関し、条例を制定することができる。
2 法律又は政令により都道府県に属する国の事務に関する都道府県の条例に違反した者に対しては、法律の定めるところにより、これに刑罰を科することがあるものとする。
15条には規則の規定が置かれ、議会が議決する条例と長が定める規則とが形式的に明確に区別されるようになったが、条例自体に罰則を設けることは認められておらず、その実効性はかなり限られるものとなっていた。
地方自治法14条は、1947年の地方自治法改正により、早速に改正されることになったが、これは、憲法又は法律に違反しない限りで一般的条例制定権を認め、条例違反に対して刑罰を科することできるようにすべしなどとするGHQの指示を受けたものであった(21)。これにより、条例で刑罰に関する規定を設けることが認められることとなったが、その一方で、条例制定権について「法律の範囲内」が「法令に違反しない限りにおいて」に改正され、それについては後に憲法の趣旨を変更するものかどうかといった議論を生じることにもなる。
なお、4で述べたように、条例案等の議案の提出や修正案の動議については、議員一人でも可能であったものが、1956年の地方自治法改正により、賛成者要件が設けられ、制限されることになる。このことは、議員による条例案提出について、大きな影響を与えることにもなったのではないかと思われる。
条例制定権については、議会の議決事項が限定列挙され、それが1956年の地方自治法改正により縮減されたこと、また、何よりも条例制定の対象外とされた機関委任事務の増大により、その制定範囲が限定される状況が続くこととなった。
これに対し、1960年代の公害問題では、住民の健康と安全を守るため自治体の条例による規制の動きが活発化し、条例による上乗せ規制・横出し規制などが行われ、これが法律でも認められるようになっていった。これによって、伝統的な「法律先占論」は次第に克服されていくことにもなった。そして、1990年代後半以降の地方分権改革では、機関委任事務が廃止され、法定受託事務についても条例の制定の対象とされるとともに、議会の権限の拡充が図られ、条例制定権も強化されるようになってきているのである。