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2021.07.28 議会改革

第20回 地方議会・自治体議会の歴史から学ぶ

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5 自治立法権の変遷

 自治体議会が立法機関として担う条例制定権の歴史についても、簡単に見ておきたい。
 条例制定権は、1888(明治21)年の市制町村制において既に規定されていた。市制10条は次のように規定しており、町村制10条も同様の規定であった。

第十条 市ノ事務及市住民ノ権利義務ニ関シ此法律中ニ明文ナク又ハ特例ヲ設クルコトヲ許セル事項ハ各市ニ於テ特ニ条例ヲ設ケテ之ヲ規定スルコトヲ得
 市ニ於テハ其市ノ設置ニ係ル営造物ニ関シ規則ヲ設クルコトヲ得
 市条例及規則ハ法律命令ニ抵触スルコトヲ得ス且之ヲ発行スルトキハ地方慣行ノ公告式ニ依ル可シ

 「市制町村制理由」によれば、自主の権として「市町村等ノ自治体ニ於テ其内部ノ事務ヲ整理スルカ為メニ法規ヲ立ツルノ権理」を付与したのは「一国ノ立法権ヲ以テ周ク地方ノ情況ヲ酌量シ其特殊ノ需要ニ應スルコト能ハサルニ因ル固ヨリ市町村ノ法規ハ其市町村ノ区域内ニ限リ且国ノ法律ヲ以テ其自主権ニ任シタル事件ニ限リ効力アルモノトス」と述べている。
 条例と規則の制定改廃については、いずれも市町村会の議決を経るものとされ、条例については内務大臣の許可、規則については市では府県参事会、町村では郡参事会の許可が必要とされた点において、両者は相違するものであった。
 130年以上も前の市制町村制において自主権として条例・規則の制定権が認められたことは注目されるが、自治立法権とまでは呼びうるものではなかったともいえるだろう。
 その後、1911年の市制町村制の全部改正により条例の規定については「市ハ市住民ノ権利義務又ハ市ノ事務ニ関シ条例ヲ設クルコトヲ得市ハ市ノ営造物ニ関シ市条例ヲ以テ規定スルモノノ外市規則ヲ設クルコトヲ得」とされるとともに、規則については府県や郡の参事会の許可は不要とされた。その後、1926(大正15)年の改正では、条例の制定・改正は引き続き内務大臣の許可事項とされたのに対し、廃止は府県知事の許可事項とされ、さらに1929(昭和4)年の改正では、制定改廃のすべてが府県知事の許可事項とされた(20)。この改正では、市町村会の議員にも発案権が認められるに至っている。
 他方、同じく1929年には、それまで府県には認められていなかった条例と規則の制定権が認められることとなり、条例と規則の制定については府県会の議決が必要とされた。
 そして、1943年の市制・町村制・府県制の改正により、財産の取得・管理・処分、工事の執行に関する規則と営造物に関する規則のみが市町村会・府県会の議決を経るべきものとされ、他の規則については広く市町村長や府県知事限りで定めることができることになった。これにより、逆に、条例事項については、法令により条例事項とされたもののほか、市町村会等の議決権限に属する事項に限られるような解釈がなされていくことにもなったのであった。

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