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2021.07.12 議員活動

第10回 「自治体政府(二元代表制)」における議会

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3 自治体政府、いくつかの役割

 自治体政府の役割は、複数考えられる。第1に、市民の意向を踏まえ市民にシビル・ミニマムを提供することである。このことは、誰もが思い浮かべる、市民から見た自治体政府の役割である。
 第2に、他の自治体政府から見た自治体政府の役割である。相互参照(政策課題に取り組むとき、他の自治体政府の情報を入手し、自らの案を修正等すること)は、経費削減やリスク回避のメリットがある。このことは、参照する自治体政府から見た、参照される自治体政府の役割であると見ることができる。
 第3に、市民から見た他の自治体政府の役割である。これには、市民を他の自治体政府が助けてくれることや、市民と他の自治体政府が連携することが挙げられる。
 第4に、(国の政策変更に伴う)自治体政府の当該自治体政府のための役割である。例えば、地方自治法が変わった場合でも自治基本条例を頂点とする条例制度で政策の根拠を明確に位置付け整序することができる。2011年5月2日に公布された「地方自治法の一部を改正する法律」により、改正前までの、いわゆる基本構想の策定義務規定は削除されているが、逆に、自治体政府があることにより自治基本条例等で総合計画(基本構想[※基本計画まで議決事件にしている例も見られる])による市政運営を行うことを規定することができる。これが、国の政策変更に伴う自治体政府の当該自治体政府のための役割である。

4 「議会の権限増大」と「自治体政府(議会・行政)の自律性と無律性」

 議会改革、分権改革の取組みの成果として、議会の権限が大きくなっている(1)。法改正に伴うものだけでも、「議案の提出要件の緩和」「議員定数の見直し(条例定数制度の導入)」「国会に対する意見書の提出」「政務調査費制度の創設」「常任委員会の数の制限の廃止」「定例会の招集回数の自由化」「専門的事項に係る調査制度の創設」「議長及び議員への臨時会の招集請求権の付与」「専決処分の要件の明確化」「議員定数の法定上限の撤廃」「議決事件の範囲の拡大」「通年会期制の導入」「議長への臨時会招集権の付与」「公聴会、参考人招致の本会議実施の法定化」「政務調査費から政務活動費への改正」「決算不認定の場合における長から議会等への報告規定の整備」等々がある。
 もともと、議会は大きな決定権を持つ。地方自治法96条1項は、必要的議決事件として「条例の制定改廃」「予算の決定」「決算の承認」「地方税の賦課徴収」「分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収」「一定の契約の締結」「一定の財産の取得又は処分」「損害賠償の額」等々を定めている。また、同条2項は、追加的議決事件として、1項に定めるもの以外にも、議会の議決事件を定めることができる(2)。追加的議決事件の例としては、総合計画の「基本構想」「基本計画」や「都市計画マスタープラン」「保健福祉医療計画」等々の例がある。
 さらに、執行部提案でない議員提案や委員会提案による条例制定(3)や、執行部に政策内容を投げかけ執行部から条例を提案させる動きもある。このことは、条例だけではなく計画においても同じことがいえる。これらのことは、先駆的議会においては、「制度」としても「運用(実態)」としても、権限が大きくなっていることを表している。他方で、権限が大きくなっていても、このようなアプローチのない議会は、「増えた権限」や全国自治体の「相互参照」を行っていないと見ることができる。すなわち、議会の権限を行使していないと見ることができる(議会の二極化)。
 地方分権は、金井利之が述べるように、自治体政府にとって国からの「他律性」を緩和するものである。しかし、それは必要条件であって充分条件ではない。国からの「他律性」は弱まるが、自治体政府自身の「自律性」は高まらず、結果として自治体は「無律性」に陥る可能性を秘めている。それゆえに、分権型社会においては、国による「他律性」の後退の空隙を埋めるべく、自治体政府による「自律性」の発揮が求められているといえよう。いわば、自治体政府の「自律性」を高めることは、分権改革の充分条件であった(金井 2018:79)。その意味では、地方分権の時代においては、「増えた権限」や全国自治体の「相互参照」を行使していない自治体政府(議会・行政)は、「無律性」に陥る可能性を秘めている。

 

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