2021.06.25 政策研究
第15回 中心性(その1)
おわりに~地動説的自治観の分かりやすさと危なさ~
国・自治体は、中心性の観点からは、地動説的にも天動説的にも位置付けられる。要するに、どこを中心として設定するかは、あくまで観察者の任意である。地域住民や地域社会を起点とするならば、中心性を措定されるべきは、まずは地元自治体であろう。地元自治体を中心として位置付けて、地元自治体の運営の面から、周辺の国や他の自治体との関係を考えるのが、自治体の中心性の基本である。
しかし、こうした天動説的自治観は、多数の自治体と国とを総体として俯瞰(ふかん)するには、実に複雑怪奇になる。そのため、唯一存在の国を中心に据えて、全体像を描く地動説的自治観の方が分かりやすい。つまり、国=中心性を前提とする自治体(群)の理解である。こうした地動説的自治観は、偏狭(parochial)な地元中心主義(localism)からの視野の解放につながる。しかし、自治体を、国の視点から、国=中心性を前提に見ることにつながるのであって、国家中心主義(statism)または(自)国民中心主義(nationalism)になることもあろう。私たちは、知らず知らずのうちに、地方自治を国=中央の立場から見るように、内面化させられている。分かりやすさは危なさにも通じる。
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