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2021.06.25 議会改革

第19回 自治体議会の空間

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3 オンライン会議

 近年のICTやデジタル技術の発達、新型コロナウイルス感染症禍などは、議会の風景や空間を変えつつある。
 議会は、代表である議員が、一定の場所に集まり、国政や自治行政の重要事項について、公開で、討議を行い、多数決により決定を行うものである。このような議会の基本的な姿は、議会の本質に関わるものであり、議会制を採用する限り維持されていくべきものであるが、その一方で、技術の進歩により、ペーパーレス化などその審議の様相に変化が見られるだけでなく、全員が議場において一堂に会さなくても、審議や決定がある程度は可能となりつつある。ただし、その場合にも、常に、技術上の限界やセキュリティ・通信の安定性などの問題のほか、議会の意義・役割といった本質的な問題があることを意識する必要がある。
 この問題は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、オンライン会議(審議)、オンライン議会などとして一気に現実的な動きとなって現れることとなった。
 特に、感染者数が多く、厳しいロックダウンが行われたイギリスでは、庶民院でも本会議・委員会の両方で臨時的にオンライン参加(遠隔参加・遠隔投票)が認められたほか(11)、地方議会では広くオンライン会議が行われた。イギリスのほか、議会が自治行政の中心となり会議の開催の頻度が高いアメリカ、カナダ、オーストラリアなどのアングロサクソン系の国でも、緊急事態下における措置として、地方議会でのオンライン会議の導入が活発に行われた(12)
 日本でも、多くの議員が感染者や濃厚接触者になるなどして会議に出席できない場合に、あるいは会議における密を避けるなど感染防止のために、オンラインによる参加(遠隔参加)や表決(遠隔投票)を認めることができるかどうかが問題となった。
 もっとも、これは、感染症による緊急事態下における議会の機能の維持の問題といえるが、それに前後する形で、妊娠出産、育児、介護などで会議に出席できない議員のオンラインでの審議参加が認められないかどうかも問題となっており、さらにオンライン会議が議員のなり手の裾野を広げることにもつながりうるとして、議員のなり手不足対策まで絡められることにもなり、議論が錯綜(さくそう)しているところもある。
 他方、総務省は、自治体議会からの照会に対し、令和2年4月30日付けで、委員会開催については自治体議会における条例や会議規則等の改正措置によってオンライン化は差し支えないとする一方、地方自治法113条及び116条1項の「出席」の概念は現に議場にいることと解されているとする見解を示した(13)。これによって、委員会についてはオンライン会議が可能だが、本会議については地方自治法の規定により困難との理解が一般化するようになった。
 そして、これを受けて、自治体議会では、委員会条例や会議規則を改正して、委員会でのオンライン会議を可能とする規定を整備するところが増えてきている。
 その場合に、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法を「オンライン」、「オンラインの方法」、「オンライン会議システム」とし、開催や開会方法の特例として、委員長は、それを活用した委員会を開くことができると規定しているものが多い(14)。他方、オンライン会議が認められる開会、参集、参加等が困難な場合については、新型コロナウイルス感染症のまん延防止の場合に限るものもあれば、そのほかに大規模災害等の発生を加えるもの、災害の発生・感染症のまん延等やむをえない理由がある場合とするもの、さらに育児、介護等のやむをえない事由により委員会の開会場所への参集が困難な委員からオンラインを活用した委員会の開会の求めがある場合などを加えるものも見られる。
 なお、委員会へのオンライン参加が認められる範囲については、希望する委員はあらかじめ委員長の許可を得なければならないと規定するだけであり、一定の事由に該当する委員に限定はしておらず、運用に委ねられているようだ。また、オンライン会議の方法としては、議場等で会議を開きつつオンライン参加を認めるハイブリッド方式と、議場等での会議を行わずにインターネット上で会議を行う完全オンライン方式とがありうるが、完全オンライン方式も排除しない規定ぶりとなっているところが多いように見受けられる。
 それでは、このような動きをどう見るべきだろうか。

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