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2021.06.25 議会改革

第19回 自治体議会の空間

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2 議場

(1)議場の構造と議席配置
 議会の議場と議席の配置については、その歴史、果たす役割等を通じて、各国の議会でそれぞれ特徴が見られるのであり、議場の構造や議席配置は、議員の行動様式や活動に少なからず影響を及ぼすことになる。
 そこで、各国の議会の本会議場の構造と議席配置について目を向けてみると、これには、およそ次のようなタイプが見られる。
 第1のタイプは、イギリス庶民院の型で、本会議場は長方形で、対面形式の議席となっており、議長席から見て右側が政府・与党の席、左側が野党の席となっている。そして、それぞれの最前列(フロントベンチャー)には、大臣や党の幹部が座り、そのほかの席は自由となっている。1834年の火災まで約300年にわたり使用されたウェストミンスター宮殿内の四角形で比較的狭いスティーブン礼拝堂がもととなり、対立する者同士が対面で討論する方式をつくり上げることになったもので、二大政党制とその幹部のリーダーシップを象徴するものともなっている。現在この長方形議場を採用しているのは、このほかにカナダなどがある。
 第2のタイプは、第1の変形型で、馬蹄(ばてい)形の形式とするものであり、オーストラリア、ニュージーランドなどで採用されているものである。
 第3のタイプは、ヨーロッパ大陸型ともいうべきもので、フランス国民議会に代表されるものである。議場は半円形で、議席は議長席に向かって扇形に配置され、その党派ごとに議席が割り当てられる。議長席から見て右側には保守、左側には革新という形をとることが多く、そこから「右翼」、「左翼」といった言葉が生まれたという。議院の構成が明確となり、議会を国民の縮図とする考え方を表すものともなっているともいわれる。なお、アメリカ連邦議会もこのような議席の配置をとるが、下院の場合には、議席の指定というものがなく、議員は自由に席を選ぶことが可能である。
 第4のタイプは、第3の変形型で、半円形の議席で、政府席対置の形式をとるものであり、ドイツ、イタリアなどで採用されているものである。
 第5のタイプは、議席配置に関する北欧型で、スウェーデンやノルウェーの議会に代表されるものである。このタイプは、選挙区(大選挙区制)を単位に議席の枠を決め、その枠の中で選挙区を同じくする議員の当選回数・当選順位を基準にして議席が決められる。議員が選挙区の代表という考え方を表しているともいわれる。
 ちなみに、第1と第2のタイプでは、自席での発言が認められているのに対し、第3と第4のタイプでは、おおむね演台が設けられそこで発言が行われる形となっている。

(2)日本の国会の議場と議席配置
 日本の国会の議場は、第4のタイプに属する。ビスマルク憲法下のドイツ帝国議会の議場を模倣してつくられたもので、議席は扇形に配置されるが、議員席より高い位置に議員席に対峙(たいじ)する格好で閣僚席(ひな壇)が設けられているのが特徴となっている。
 また、国会では、本会議場の議席の配置は、召集日の会議の冒頭において、あらかじめ定められた仮議席のとおりに議長が指定することによって決められているが、その場合、議席は衆参両院とも基本的に会派別に指定されることになっている。そして、それぞれの会派では、だいたい最前列を1年生議員とし、後ろの方へ行くほど当選回数の多い議員の議席としており、最後列には党役員、議長、副議長などが並ぶ形となっている。もっとも、このような議席となったのは、衆議院では1915(大正4)年の第36回帝国議会から、参議院では第2回国会からのことで、それ以前においては、府県順に定められた仮議席に着席した後、抽選で議席が指定されたり(第20回帝国議会までの衆議院)、年長順に議席が定められた(第1回国会の参議院)こともあったようだ。ちなみに、議席の指定については、衆議院では、議長席から見て中央から右側を第一会派の議席として以下所属議員数による大会派順の議席としており、参議院では、最大会派が中央に位置し、以下左右に会派勢力順に位置するのを例としている。
 なお、政府の閣僚等が議員を見下ろす形となっている「ひな壇」に対しては、議会が協賛機関であったころのなごりで、国権の最高機関となった国会の議場としては好ましくないとして、これを取り払うよう求める意見が何度か出されている。また、憲政の神様といわれ、1890年の議会開設時から1952(昭和27)年までの60年余にわたって代議士であり続けた尾崎行雄は、日本の国会の議場について次のように語っている(5)
 「議長の許可を得て、議場を見下ろすような高い演壇の上に上がり、大きなテーブルの上に原稿をひろげ、コップの水を飲んでから『諸君』と切り出すと、つい出さんでもいい大声を出したり、せんでもいいみえを切ったりするのが、人間の心理作用かも知れぬ。いっそのこと演壇を取りはらい、議員は皆自分の議席で発言するようにすれば、実のある熟談協議ができるであろう。その点でイギリスの議場はおあつらえ向きにできている。」
 他方、委員会が行われる委員会室については、対面の教室型、馬蹄形型などのタイプがある。
 

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