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2021.06.25 政策研究

【第4回】手ごわい学校再編の問題を「対話」で解決する~静岡県牧之原市の取組み~

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牧之原市の教育環境の現状

 牧之原市には、榛原地域に小学校が4校、中学校が1校。相良地域に小学校が5校(うち1校は隣接する菊川市との組合立)、中学校が3校(うち1校は菊川市との組合立、1校は御前崎市との組合立)ある。小学校9校のうち7校が1学年1クラスの単学級、中学校4校のうち1校が単学級である。
 人口減少により、2000年から20年間で児童・生徒数が半減し、今後も減少が見込まれている。市内に12校ある校舎の多くは数年後には築50年超となり老朽化が進んでいる。また、牧之原市は南海トラフ巨大地震の被害が想定され、津波浸水想定区域内に4校が立地している。
 2015年に市民との対話により策定された「総合計画」では、「若者が魅力を感じる教育環境の実現」、教育大綱では、「子どもたちが学びやすい環境を整えるため小学校の規模と配置の適正化を図る」こと、が明記されている。また、同様に市民との対話で2016年11月に策定された「公共施設マネジメント基本計画」の方針では、「小中連携教育を進め、魅力ある教育環境を実現するため、小中学校再編計画を策定する」ことがうたわれている。
 以上のことからも、学校再編は牧之原市にとって重要なプロジェクトの一つであり、不可避のものであるとの認識から、2017年6月、教育委員会主催で、市民に牧之原市の教育の問題について広く知ってもらう目的で、「牧之原市教育シンポジウム」を開催。2018年2月には、「牧之原市教育のあり方検討委員会」(以下「あり方委員会」という)が設置され、坪池洋前教育長から、「今後の牧之原市を見据えた、望ましい教育環境の方向性と具体案」について諮問されることになった。
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牧之原市の学校再編の検討プロセス

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教育シンポジウム

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あり方委員会の議論の様子

「牧之原市教育のあり方検討委員会」と対話の場

 あり方委員会は、学識経験者、学校関係者、保護者、事業者、公募の市民の10人で組織され、委員長は静岡大学教育学部の島田桂吾准教授(教育行政)が務めた。委員会では、6回の会議のほかに、島根県雲南市教育委員会職員を招いての「キャリア教育」に関する研修会、京都市立東山泉小中学校等への「小中一貫教育、複合施設」の視察研修を行った。
 議論への市民参加の機会として、2018年10月に、あり方委員会が主催し、市民ファシリが進行を担い、市内2会場(榛原地域、相良地域)でワークショップ形式の意見交換会が開催された。自治会役員、小中学校PTA役員、教職員、幼保育園保護者等、各会場に40人が参加した。橋本勝教育長(2018年10月から)の挨拶から始まり、島田委員長から、小中一貫教育等のこれまでの検討内容の説明があり、意見交換が行われた。対話は、「10~15年後の学校をデザインしてみよう」をテーマに、未来の学校のありたい姿をその理由を含めて大きめの付箋に書いてもらい、5~6人の小グループで思いを共有、無理にグループ内で意見集約をすることなく、グループで出た意見を全体で共有し、参加者がそれぞれの学校への思いを聴き合う場にした。従来の学校への思い込みに気づき、新しい学校の可能性を感じるとともに、参加者が地域に学校再編の話題を持ち帰ってもらう効果があった。
 あり方委員会は、2018年12月、「牧之原市望ましい教育環境のあり方について(答申)」を提出。それを受けて、2019年3月に、教育委員会は「牧之原市望ましい教育環境のあり方に関する方針」(以下「あり方方針」という)をまとめた。方針の骨子は、子どもたちの「次代を切り拓く力」(主体的に社会を生き抜くことができる人間力)を育成する。そのために、キャリア教育を軸とした小中一貫教育とコミュニティ・スクールを進める。施設は、安心・安全で通いたい・通わせたいと思われる小中一貫校をつくる。2030年の開校を目指し、学校再編計画をつくる、である。
 2019年6月には、あり方方針を市民や関係者に知らせ、一緒に考える場として教育委員会主催で、「牧之原市教育シンポジウム」が開催された。100人の市民が参加し、橋本教育長の方針説明、外部有識者の講演、杉本市長の話の後、ここでも対話の時間がとられた。
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あり方委員会主催の市民意見交換会

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進行を務める市民ファシリ

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