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2021.06.10 議員活動

第9回 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」「政策変容」と議会

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11 「政策の窓モデル」から見た政策変容

 政策の決定・実施は、「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」という三つの流れがすべて合流すると成立する見込みが高くなる。しかし、そのうちの一つでも欠けてしまうと、決定にはなかなかたどり着かないし、決定されても実施されない状況に陥る。これが「政策の窓モデル」である。
 このため、「政策」にも「問題の流れ」「政治の流れ」がそろったときに存在する(流れがある)ことが求められる。そのためには、常に「社会変容」「環境変容」「担い手変容」を踏まえ「政策」の見直しがされていることが必要である。「社会変容」「環境変容」「担い手変容」に対応できなければ、「政策変容」は成しえない。市民も自治体政府(議会・行政)も迷路に陥ってしまう。

結び

 都市型社会における「安心・安全型政策」への変容が成立する条件として、自治体政府の「政策資源の制約」という限界を超克することが必要になる。そこには、市民と自治体政府(議会・行政)の間に、「安心・安全型政策の実施」と「政策資源の確保」という「緊張感のある、ゆらぎある均衡」が求められる。
 「期待不一致理論」(7)によれば、議員は市民から期待された活動と同じ内容の活動をした場合には、市民の議員への関心は薄れることになる。議員はそういう意味では「かなしく寂しい」立場にある。しかし、議員は切磋琢磨(せっさたくま)することでその「かなしく寂しい」気持ちを超克できるのではなかろうか。政策が「混沌型政策」から「安心・安全型政策」へと変容することが期待されるこれからの社会においては、市民のための議会改革がこれまで以上に求められてくる。自治体議会の活躍に期待したい。

(1) あくまで最も優先される価値が高い政策を選択し評価することである。例えば、総合点の順位が低くとも、重大事故の起こる可能性がない政策を選択するという考え方である。
(2) 地域社会研究会と池田町とで、まちづくりシンポジウムへの参加を全国に呼びかけた。
(3) 地域社会研究会については、岡崎 2020:第1講に詳しい。
(4) 武蔵野市における長期計画(総合計画)の基礎資料として1973年に作成され、全国に作成が広がっている。
(5) 西出・編著 2021には、「なぜ遠くの自治に応援職員を派遣するのか」についても、アンケート調査とインタビュー調査の結果をもとに検討が行われている。
(6) 山谷=藤井 2021には、行き過ぎた自治体改革が新型コロナウイルス対応に与えた影響を統計数値とエッセンシャル・ワーカーへのヒアリングをもとに明らかにしている。
(7) 「期待不一致理論」では、期待水準と知覚水準が一致した場合、期待者は「期待どおりだった」と評価する一方、政策内容や供給者への関心度は下がることとなる。また、知覚水準が期待水準を上回った場合、関心度は高まることになる。

■参考⽂献
◇岡崎昌之(2020)『まちづくり再考―現場から学ぶ地域自立への道しるべ』ぎょうせい
◇土山希美枝(2007)『高度成長期「都市政策」の政治過程』日本評論社
◇土山希美枝(2018)「自治」石橋章市朗=佐野亘=土山希美枝=南島和久『公共政策学』ミネルヴァ書房、91~111頁
◇西出順郎・編著(2021)『災害連携のための自治体「応援職員」派遣ハンドブック─東日本大震災のデータと事例から』公人の友社
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会
◇武蔵野市(2018)『武蔵野市地域生活環境指標 平成30年版(2018年版)』
◇山谷清志=藤井誠一郎(2021)『地域を支えるエッセンシャル・ワーク 保健所・病院・清掃・子育てなどの現場から』ぎょうせい
◇龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター(2020)LORCジャーナル地域協働vol.16

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