2021.06.10 議員活動
第9回 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」「政策変容」と議会
9 「避難所での支援内容」と議会の役割
阪神・淡路大震災や東日本大震災以降、「環境変容」としての大規模災害の多発生、「担い手変容」としての政策主体の多様化の中で、「政策変容」の一つとして、防災・減災政策が重きを増している。防災・減災政策は、自治体政府も市民、地域、企業・団体、政府(他の自治体政府・国・国際機構)と連携しながら進めることになる。そこには、議会も行政とともに、自治体政府の当事者として関わることになる。
ここでは、防災・減災政策として必要になる「避難所」について考えてみよう。表3は「避難所」において必要となる支援内容を例示したものである。議会には、防災・減災政策として「避難所」に漏れがないかのチェックや、必要であれば予算要望をすることも求められている。なお、災害時相互応援協定の内容(どのような場合にどの程度応援できるか、どのような場合にどの程度応援してもらえるか等)を再確認することも必要であろう。そこでの議論は、なぜ他の自治体を支援するのかという支援目的(5)も明らかにすることにつながるであろう。さらに多くの場合、避難所の設置・運営は自治体政府、企業、団体、医療従事者、ボランティア等、様々な政策主体の「連携・連鎖」により行われる。この「連携・連鎖」を訓練や議論を通して評価し、ボトルネックを解消することも議会には求められている。
表3 避難所での支援内容の例
10 新型コロナウイルスへの対応から:「従来から求められていた政策」とその実現のために「求められる必要条件」
次に、新型コロナウイルスへの対応から、これらの出来事に学び、本当は「従来から求められていた政策(=不十分だった政策)」と、その実現のために「求められる必要条件」について考えてみよう。これらについて整理したものが表4である。
新型コロナウイルスでは、「ステイホーム」といわれても〈居場所のない弱者〉もいた。このことは、従来から不十分だった政策を推進することの必要性を示している。また、行き過ぎた行政改革により生じた負の側面(6)を超克することも求めている。そのためには、当該政策が始まったときの議論の経緯(社会状況、政策の目的など(表5参照))、さらにはその後の「環境変容」を確認することが必要となる。そこでは、行き過ぎていても前例踏襲を必ず是とする議会運営は見直されることになる。議論の経緯は、たとえ実現しなかった政策の議論であっても、これからの社会に求められる。過去を生きた人々、今を生きる人々、将来を生きる人々をつなぐ議論の経緯は大切なものである。
新型コロナウイルスの発生により、これまでの「環境変容」がインターネット環境整備や在宅勤務のように一層進むものと、これまでの「環境変容」が東京一極集中のように緩やかになる(中長期的には分からない)ものがある。そのことを見据えることが肝要である。さらに、災害と新型コロナウイルスが同時発生したときの対応を検討しておくことも必要であるし、当該自治体政府を構成する議員や首長・幹部職員が全滅したときの対応を準備しておくことも求められている。そこには、事業継続計画の見直しと、市民、地域、企業・団体、政府(他の自治体政府・国・国際機構)の新たな連携が求められる。
表4 「従来から求められていた政策」とその実現のために「求められる必要条件」
表5 政策が始まったときの「議論の経緯」チェック項目(例)