2021.06.10 議員活動
第9回 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」「政策変容」と議会
5 多様な人が、多方位から見ることで「環境変容」は予測しやすくなる
「安心・安全型政策」を考えるには、「現在」から「将来」のことを考える「現在から見た政策」だけではなく、目標時点である「将来」から遡り「現在」まで段階的に目標を立てる「将来から見た政策」も必要である。つまり「現在から見た政策」「将来から見た政策」両方の立場から見た政策が必要である。また、その政策をより適切なものとするためには、「過去」から「現在」までの歩みを振り返る「過去から現在を見た評価」と、「現在」から「過去」に段階的に遡る「現在から過去を見た評価」を行うことが求められる(図2参照)。そうすることにより、図3~5に示すように、見えにくい課題、見えにくい時代潮流、見えにくい地域特徴、が可視化されることになる。これらが可視化されなければ、適切な政策過程は成立しない。なお、いつの時代においても、自治体内外の多様な人々の行動が自治体や社会に広く影響を与えている(図2参照)。
図2 政策の多方位検討の必要性
6 シンポジウムの効用
シンポジウムは、多方位から政策を考える上で効果的である。このことは、1975年11月6日から8日に北海道池田町で実施された「池田町まちづくりシンポジウム」(2)とその後の経緯からも明らかである。このシンポジウムに「地域社会研究会」(3)のメンバーとして参加した岡崎昌之によれば、「地域社会研究会」のメンバーは、シンポジウム終了後に参加した道内の自治体を訪ね、池田町を道内他地域から客観的に見る機会を得たという(岡崎 2020:18)。また、翌年に大分県湯布院町で実施された「湯布院シンポジウム」(湯布院の関係者も「池田町まちづくりシンポジウム」に参加していた)では、市町村長、自治体職員、研究者、学生、研究機関、企業、マスコミなど幅広い立場の人たちが、熱心に七つのテーマのもとに議論をしている(岡崎 2020:22)。
このことからも明らかなように、シンポジウムは自らの自治体を相対化して見ることにつながるとともに、多様な人々が多方位から「議論する場」「傾聴する場」となる。また、「人材ネットワークの場」「地域交流の場」となる。このことは、自らの地域を見つめ直し、将来を見つめること、将来から今を見つめることにつながる。自治体議会にもシンポジウムを企画することが望まれる。