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2021.05.12 政策研究

【第2回】「政策決議提案」を出口とした議会からの「政策サイクル」~岩手県奥州市議会の取組み~

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具体的な「政策決議提案」の内容と成果

 ガイドラインに沿った形で活動し、2019年度には、総務常任委員会は、「公共交通施策」をテーマとして、①総合的な公共交通ネットワークの構築、②拠点間交通の構築、③地区内交通の構築、の提言項目で12の具体的施策を、建設環境常任委員会は、「交通安全対策」をテーマとして、①高齢ドライバー対策、②歩行者保護対策、③交通安全意識の向上、の提言項目で23の具体的な施策を、産業経済常任委員会は、「農業振興及び地域6次産業化の推進」をテーマとして、①農業振興ビジョン策定の義務化、②実効性ある推進計画の策定、③支援環境の整備、の提言項目で12の具体的な施策を、政策提言書にまとめ、それを全会一致で可決後に市長に提出している(教育厚生常任委員会は、「障がいを理由とする差別の解消に関する政策検討報告書」を提出)。その結果、2020年10月、県内初の任意団体による自家用有償旅客運送の導入、2020年9月、高齢ドライバー運転技術講習会の実施、2020年6月、学校給食における市内産食材の利用率向上等、議会による政策提言が次々に実現している。「政策決議提案」により実効性がより担保されていることや、提案前の丁寧な「当局との意見調整」が、政策のスピーディーな実現に寄与している。
 常任委員会のメンバーが入れ替わった2020年3月からは、総務常任委員会は、「将来の公共施設のあり方」、建設環境常任委員会は、「SDGsを通じて取り組む環境問題」、産業経済常任委員会は、「地域おこし協力隊制度を活用した産業振興」、教育厚生常任委員会は、「少人数に対応した学校のあり方」をテーマに、政策提言に向けて調査・検討中であり、ガイドラインのプロセスに従い、団体等とのワールドカフェによる話し合い、先進地視察、専門的知見の活用等が行われている。
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ワールドカフェによる市民意見の把握

議会基本条例のありたい姿に向かって

 奥州市議会では2020年12月、議会基本条例に基づき、「奥州市議会基本条例検証報告書」をとりまとめている。検証作業は、議会基本条例の条文全てにわたって、達成度を測る「段階評価」、条例改正の要否を測る「管理評価」の二つの評価区分で実施。そのうち「段階評価」としては、条文に規定されている目的が達成できているかを5段階で評価している(S:達成、A:おおむね達成、B:一部達成、C:ほぼ未達成、D:未達成)。前述の政策提案、政策提言を規定した7条(市長等との関係)の評価は、「政策決議提案」の取組み等もあり「A」評価となっている。基本条例が掲げるありたい議会の姿、政策中心の議会に近づいたことになる。「政策サイクル」を一巡させることにより、地域の課題解決に向けて、委員会内での議員間討議の実施、ワールドカフェによる市民意見聴取等、委員会活動の仕組みが整ってきた。議会内では、政策提案を行うのが当り前の雰囲気が醸成されてきたという。議員間討議のレベルをアップして、政策立案等の質をさらに上げていく必要性はあるが、議会としては大きな一歩である。
 奥州版「政策サイクル」の取組みを参考に、常任委員会の機能を強化し、議会基本条例のありたい姿に向かって、政策中心の議会が全国に広がることを期待したい。
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政策提案を市長に提出

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実現した県内初の任意団体による自家用有償旅客運送

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