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2021.05.12 議員活動

第8回 評価と議会

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16 結び

 多くの自治体で実施している行政評価について、総務省自治行政局市町村課行政経営支援室 2017によれば、その過程において自治体議会が関わっている割合は小さい。しかし、行政評価の過程において、議会として議論した上で、委員会ごとに行政の担当部局と議論することは有意義であろう。市民や専門家との議論も必要である。議論することにより、当該政策の内容について「どのような工夫が必要なのか」を考え、アイデアが生まれるとともに、適正な評価の実施に近づくことができる。そして、政策は、評価した後、改善することが必要である。改善することが難しい場合には、「今より悪くしない」ことを当面は考えることも必要である。
 後戻りが難しい政策については、議会として阻止することが求められる。例えば、評価の指標として「コモンズの悲劇」に連なるような政策を、議会として監視できる指標を作成し実践することである。「コモンズの悲劇」は、共有資源を乱獲されることによって枯渇させることのないようにする警鐘であるが、ここでは「社会・経済・自然・科学技術の制御の仕組み」も共有資源として含まれる。
 自治体議員には、行政職員と同じように「評価疲れ」があるかもしれない。負担感を取り除き「評価疲れ」を癒やすことが必要である。「評価疲れ」は評価の形骸化をもたらす。そのため政策過程に謬(びゅう)をもたらす。また、議会改革で成果を上げた自治体議会も、4年に一度の選挙で議員が入れ替わることにより、議会改革の初心を組織として忘れてしまうかもしれない。初心を忘れないためには、自己に厳しい規範(自治基本条例や議会基本条例など)を定め実施すること、自己及び他者の目で定期的に評価することが求められる。自らの自治体を「コモンズの悲劇」の舞台にしてはならない。

(1) 例えば、伊藤 2015:51の段階モデルがある。ただし、使われている用語に違いがある。
(2) 課題抽出過程で課題を発見し、社会指標の結果や関係者のヒアリング調査などにより、その規模や深刻度を調査することで、その課題について政策として対応することが必要かどうかを判断するための評価(伊藤 2015:238-239)。
(3) 佐藤徹編著 2021には、事業のロジックモデル(単線フローチャート型)、施策のロジックモデル①(複線フローチャート型)、施策のロジックモデル②(体系図型)が、事例とともに説明されている。
(4) 近年では、利害関係人が外から評価を見守るだけでなく、評価における対象選定、基準設定、結果の解釈などのプロセスに利害関係人を参加させる企ても提唱されている(参加重視型評価(伊藤 2015:249))。
(5) 地方公務員法の一部改正(2014年5月公布、2016年4月施行)により「人事評価制度の導入」が求められることになった。


■参考文献
◇秋吉貴雄(2017)『入門 公共政策学』中央公論新社
◇伊藤修一郎(2015)「公共政策の実施」秋吉貴雄=伊藤修一郎=北山俊哉『公共政策学の基礎〈新版〉』有斐閣、209〜229頁
◇打越綾子(2006)「自治体における政策調整の構造的課題─動物愛護管理行政を素材にして」公共政策研究vol.6、90〜101頁
◇児山正史(2021)「ロジックモデルの概要」佐藤徹編著『エビデンスに基づく自治体政策入門─ロジックモデルの作り方・活かし方』公職研、15〜18頁
◇総務省自治行政局市町村課行政経営支援室(2017)「地方公共団体における行政評価の取組状況等に関する調査結果」
◇曽我謙悟(2014)『行政学(補訂)』有斐閣
◇田中富雄(2018)「自治基本条例の検証に求められる視角」高崎経済大学地域政策学会編『地域政策研究』vol.20-3、87〜102頁
◇土山希美枝(2017)『「質問力」でつくる政策議会』公人の友社
◇南島和久(2018)「評価」石橋章市朗=佐野亘=土山希美枝=南島和久『公共政策学』ミネルヴァ書房、185〜209頁
◇西尾勝(1990)『行政学の基礎概念』東京大学出版会
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会
◇村田和代(2020)「これからの話し合いを考えよう」村田和代編『これからの話し合いを考えよう (シリーズ 話し合い学をつくる3)』ひつじ書房、1〜20頁

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