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2021.04.26 議員活動

第12回 復興支援の新しい仕組み、創造的復興

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第24講 創造的復興

 この連載では、これまで自治体の防災復興政策について、災害の予防から被災後の地域の復興までの取組みを、主に法制度や政策の面から議員の方向けに講義形式で述べてきました。今回の第24講でいよいよ最終回になります。今回は、全体のまとめとして、復興後の地域社会を見据えた取組みについて考えたいと思います。

1 「創造的復興」とは何か─創造的復興の起源─
 我が国は、世界的にみても災害が多い国であることは、これまでも述べてきましたが、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災以前は、被災したハードの施設を前の状態に戻し、災害によりマイナスの状態になった地域をゼロベースにすることが、災害からの復興と考えられてきました。したがって、法制度や国や自治体の支援制度も現状復旧を前提としており、復興のための事業自体は、新たな価値を生まないものととらえてきたのです。
 しかし、大災害後の被災地を、被災前よりももっと魅力ある地域にしようという考え方のもとに復興政策が立案されたのが、阪神・淡路大震災からの復興計画でした。その象徴的な言葉が「創造的復興」です。
 「創造的復興」という概念は、震災から半年後の1995年7月に策定された「兵庫県阪神・淡路震災復興計画」に初めて使われています。その基本方針によると「復興にあたって重要なことは、単に1月17日以前の状態を回復するだけではなく、新たな視点から都市を再生する『創造的復興』を成し遂げることである」(5)と説明されています。
 もともと「創造的復興」という言葉があったわけではなく、経済学者のシュンペーターの「創造的破壊」に由来しているとされています(6)。資本主義が「創造的破壊」を繰り返しながら発展してきたことになぞらえて、大規模災害により破壊された地域を、単に被災前と同様の形に戻すのではなく、新しい視点でつくり変えようする意味を込めて「創造的復興」という概念を用いたのではないかと思われます。

2 創造的復興の国際的展開
 阪神・淡路大震災からの復興の考え方として生まれた「創造的復興」の理念は、その後、災害の多い日本発のものとして世界に通じる防災理念になっていきます。
 すなわち、国連は、1990年から1999年の10年を「国連国際防災の10年」として、自然災害による人的損失、物的損害、社会的・経済的混乱について、国際協調行動を通じて軽減することを提唱していました。そうした中、阪神・淡路大震災が起こる前年の1994年、横浜で第1回国連防災世界会議が開催され、自然災害の防止、準備、緩和に関するガイドラインを提供する「より安全な世界のための横浜戦略と行動計画」が採択されました。
 その後、阪神・淡路大震災後10年となる2005年には、神戸で第2回国連防災世界会議が開催され、「兵庫行動枠組2005-2015」として、次の5項目が採択されます。
  ① 防災の国レベルの制度的、法的枠組の整備など
  ② 国及び地方レベルの災害リスク評価など
  ③ 防災文化構築のための防災教育など
  ④ 重要な公共施設等の災害リスク軽減策の実施など
  ⑤ 効果的な応急対応のための事前準備の強化
  そして、東日本大震災から4年目となる2015年に仙台で第3回国連防災世界会議が開催され、同会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」(7)では、「兵庫行動枠組2005-2015」の10年の間、「防災の取組は進んだが、災害による人的被害、経済、社会、健康、文化、環境面での被害は増大し、持続可能な開発を阻害している。災害リスクを減らすため、災害への備えの向上と国際協力に支持される『より良い復興(Build Back Better)』が必要であり、より広範かつ人間中心の予防的アプローチを取らなければならない」との考え方が示されています。さらに、同枠組では、次のような「指導原則」が採択されています。
 ① 各国は防災の一義的な責任を持つ。
 ② 国の事情に応じ、中央政府、関連機関、各セクター、ステークホルダー間で責任を共有する。
 ③ 人とその資産、健康、暮らし、生産的資産の保護、開発への権利を含む人権を尊重する。
 ④ 社会全体の関与と連携、女性と若者のリーダーシップの促進を図る。
 ⑤ 事前の防災投資は災害後の対応・復旧より費用対効果が高い。
 ⑥ 「より良い復興(Build Back Better)」による災害後の復旧・復興を図る。
 ⑦ 途上国には財政支援、技術移転、能力構築を通じた支援が必要である。
 「仙台防災枠組2015-2030」で示された「より良い復興(Build Back Better)」の考え方は、まさに「創造的復興」と軌を一にするものであり、防災復興政策の世界標準ともいうべきものに進化したということができます。
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第3回国連防災世界会議の様子(仙台市)。写真右は、自治体として会議に参加した岩手県の達増知事(左から3人目)、筆者(左から2人目)ほか。(2015年3月)

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