2021.04.12 議員活動
第7回 実施と議会
13 「議会の裁量」と「鉄の三角同盟」・「自治体政府内の鉄の三角同盟・四角同盟」
議会活動の問題の一つは、議会の活動を行政が制御していないことである。もちろん、首長による議会解散などのけん制制度はあるものの、日常的には議会活動を行政が制御(チェック)することは限られている。行政に対する議会の権限(地方自治法96条)の大きさと比較しても少ない。そのことは、議会の権限を行使するに当たり「不当な議会の裁量」が生まれることにつながる。その裁量を適正なものにするためには、議会の活動を行政が制御することが必要となる。そして、その制御は市民の前での公開議論が前提となる。
もっとも、「鉄の三角同盟」と呼ばれるような、一部の市民(団体・法人)・政治家(首長・(一部の)議員)・一部の職員による利益同盟関係や、「自治体政府内の鉄の三角同盟」と呼びうる議員・首長・職員による利益同盟関係が起こりうる。「自治体政府内の鉄の三角同盟」の例としては、議員や首長の報酬額、職員の給与額を引き上げることが考えられる。これらを審議する審議会の審議委員報酬も引き上げれば「自治体政府内の鉄の四角同盟」とも形容しうる。
14 「政策の失敗」「政策実施の謬」
「政策の失敗」は、政策過程の中に存在する一つ以上の謬(=間違い)により生じる。「課題抽出」「選択肢作成」「決定」の中に一つでも謬が生じれば「実施」や「評価」にも謬が生じる可能性が高まる。また、これらの政策過程の「つなぎ」(=接続)が適正に機能していないと、適正な政策過程は失われ「政策の失敗」につながる。南島和久が述べるように、政策実施過程においても、そこに登場するアクター間の「サブ政治」や「サブ決定」がある(南島 2018:169)ことにより謬が生ずることもある。政策実施において政策が円滑に実施されるためには、「課題抽出」の段階から「実施」「評価」まで政策過程全体を見通すこと、各過程において随時政策過程全体を見直すことが必要になってくる。適正な政策実施を目指して、議会改革そして自治体政府改革を志向するプレイヤーとして、「政策の失敗」を回避しうる議会・議員の存在が期待されている。
15 議会の「正常性バイアス」を超克する
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまうことを「正常性バイアス」という。意見が分かれたとき自分の意見を過大評価するということである。一般には、自分の意見を2割ぐらい過大評価するという。議会・議員には、この「正常性バイアス」を超克することが求められている。
では、そのためには、どうしたらいいのだろうか。実施過程においても理解者を増やしておくことは有益である。そのためには、良いと思われる政策について、なるべく多くの議員で学ぶこと、そして市民や行政とともに議会としての議論を重ねておくことが求められる。そうすることにより、政策についての理解者を増やしておくことが可能となるとともに、自分の考え方を相対化することにもつながる。別海町議会(北海道)における、一般質問の前後における質問事項の議会としてのブラッシュアップと議論の取組み(4)は、議会の正常性バイアスを超克することにつながる例である。