地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.04.12 議員活動

第7回 実施と議会

LINEで送る

8 平常時と非常時を「つなげる人・組織・仕組み」

 前節においては、「つなげる連鎖」の機能を大切にすることを見てきた。一つは、「今時点でのつなげる人・組織・仕組み」である。二つ目は、「将来にわたってのつなげる人・組織・仕組み」である。本節では、三つ目の「つなげる人・組織・仕組み」として、「平常時と非常時をつなげる人・組織・仕組み」を取り上げる。例えば、大規模マンション自治会と周辺自治会の平常時のイベント(災害訓練、スポーツ大会、お祭りなど)共同開催は、マンションが被災したときに減災効果を発揮しうる。市内の大型店舗、コンビニ、既存店も平常時からコミュニケーションをとっておくことにより非常時に食品提供などの協力をしてもらえることにつながる。また、非常時の取組みも、平常時のコミュニケーションにつながりうる。このことは、市民相互又は自治体政府相互における交流にも当てはまる。平常時の交流が安心感を与えるなど非常時の支援にも役立ち、災害時被災したメンバーが平常時に支援した市民ないし自治体政府のイベント(災害訓練、スポーツ大会、お祭りなど)に参加し、イベントを盛り上げることは、その例である。
 議会においても、「平常時と非常時をつなげる人・組織・仕組み」としての議会・議員の役割があろう。議会業務継続計画を作成し(見直し)訓練しておくことは、「平常時と非常時をつなげる人・組織・仕組み」として、議会・議員に第一に求められることである。

9 非常時の実施:求められる「想定力」「構想力」と「クライシスコミュニケーション」

 災害が起き、災害時相互応援協定を結んでいる自治体に連絡がつかないとき、協定自治体に応援車両を行かせることは、先を見越した首長の行動として一つの見識である。しかし、福島原発事故があったとき、事故直後に応援に行った職員が放射線被害を受けていないか戻ってから検査を受けたことを考慮すると、これまで経験したことのない事態をも考慮し判断することも必要であると思われる。また、東日本大震災の沿岸部に応援に行った消防救急隊員が、派遣元の自治体に戻ってきたときには、過酷な現地の姿を目の当たりにしてメンタル面で相当に苦しい状況にあることが見受けられた。このように、非常時の実施には想定内外の困難が伴うこともある。そこには、想定内を広げ、想定外を極力小さくする「想定力」が求められるとともに、想定内外の困難に立ち向かう「構想力」が必要となる。これらの「想定力」「構想力」を蓄える一つの方法としては、計画を策定(見直し)すること、そして被災地へ応援に行く経験を重ねることが考えられる。
 また、非常時の実施においては、弱者と防災・減災をつなぐ視点も重要になる。そのためには、平常時から弱者と防災・減災をつなぐ取組みが求められる。ここにいう弱者には、病人、障害者、子ども、老人、低所得者等のあらゆる弱者が含まれる。災害発生時においては、これらの弱者は、「二重の弱者」となる。災害発生時においては、被災弱者(「一重の弱者」)が新たに発生するだけではなく、被災と同時にけがを負ったような「二重の弱者」を一気にもたらすこともある。被災地の医療関係者がけがを負ったような場合、その地域は「三重の弱者地域」となってしまう。これらのことを予測した二重三重の「想定力」「構想力」が必要となる。
 議会には、クライシスコミュニケーションにおいても留意すべき事項がある。村田和代は、クライシスコミュニケーションの観点から、聞き手の立場に立ったシンプルで分かりやすい語り方、そして先の見えない危機的状況においては、頻繫に発信することが重要であることを政治家のインタビュー談話をもとに実証している。この議論は、行政トップから市民への談話であるが(村田 2020:11)、議会からの、市民、行政、国への発信にも求められることである。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る