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2021.04.12 議員活動

第7回 実施と議会

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5 「実施の連鎖」と「実施欠損」

 自治体政府がイベントを主催する場合、イベントをスムーズに運ぶためには、その全体像を早い段階から、地元市民、関係団体、関係機関などに説明・協議を行い、関係者間において疑問点を解消しておくことが必要となる。伊藤修一郎は、実施活動が多くの機関に分担する状態を「実施の連鎖」と呼び、多数のリンクで結ばれる機関の間の協力の度合いが完璧に近くなければ、多数の小さな齟齬(そご)が生まれて大きな失敗を生み出すことを「実施欠損」という言葉で表現した(伊藤 2015:223)。例えば、新型コロナウイルスのワクチン接種は、国内だけに限定しても、国(多くの府省)、都道府県、市区町村、医療団体(医師会等)、医療機関、運送会社などにおいて、多くの「実施の連鎖」が必要となる。「実施の連鎖」の連携に問題があり、目標期限までにワクチン接種が滞ったり、ワクチンの廃棄などによる医療資源の廃棄など「実施欠損」が生じることも懸念される。そこには、議会による制御(チェック)と知恵(政策提言)が求められる。
 また、「実施の連鎖」には、「議会の広域連携」も関連することがある。議会間で特定のテーマについて議論し、方向性を出し、関係者に働きかけていく場合などである。大津市議会・草津市議会連携推進会議(2)における事例は、「議会の広域連携」を含めた「実施の連鎖」の実践例であるといえる。

6 実施における意思疎通・調整の「場」

 首長からの命令・指示のみでは、首長と現場の行政職員との間の意思疎通が図れない場合もある。現場からの意見集約も難しくなる。双方向性のある意思疎通のためには、政策実施においても、意思疎通・調整の「場」が必要になってくる。例えば、町会長連絡会議という意思疎通・調整の「場」がある。町会長連絡会議の出席者は、全ての町会長と首長や部長などの行政幹部である。年度当初の町会長連絡会議においては、当該年度における町会関係の政策を紹介するのが一般的である。そこでは、自治体全域を対象とする主な行事への参加や募金のお願いも行われる。このことは、行事への参加者や募金額を確保することが目的となっている。本人・代理人関係でいえば、行事のPRや募金のお願いをするのは本人である行政側であり、代理人は町会への行事のPRや募金のお願い・集金をする町会長になる。町会長連絡会議は、本人・代理人関係にとって、実施におけるより良い意思疎通・調整の「場」になりえる。代理人である町会長からの提案により、本人である行政側の依頼内容が変更(例えば、集金方法の振込みへの変更)になることもある。これは、意思疎通・調整の「場」が機能した例である。
 議会においても、例えば議会報告会や意見交換会という意思疎通・調整の「場」がある。議会報告会や意見交換会を行うことにより、議会に対する関心を喚起したり、市民や議会において必要となる情報を提供・入手することができる。もちろん、ウェブ上の議会報告会や意見交換会も意思疎通・調整の「場」となりえる。議会活動においても、意思疎通・調整の「場」が求められているのである。

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