2021.03.25 議員活動
第11回 特殊な災害等への自治体の対応
3 健康危機管理に対する自治体の政策法務対応
自治体の対応スキームは、基本的に、医療面での発症者への医療提供、住民を含めたまん延防止と、経済面での事業者支援、感染症による後遺症や失業等でダメージを受けた住民への生活支援などが中心です。これらは、自然災害の際の対応としての「住民の安全確保」、「被災者への生活支援」、「地域経済の再生」と同様の考え方とみることができます。
ここでは、自治体の条例対応に着目して考えます。
自治体政策法務に関する研究機関のウェブサイト(7)によると、新型コロナウイルス感染症対策に係る独自条例の制定例は、名古屋市(特措法改正前の2020年3月10日)を嚆矢(こうし)として、53条例確認され(2021年2月26日現在)、都道府県が12条例(うち東京都は2条例)、市町村が41条例とされています。
主な規定内容としては、自治体、事業者、住民の責務を定めているもの(ほぼ全て)、対策本部の組織等を定めているもの(長野県、岐阜県、沖縄県など)、感染者に対する差別禁止などの人権的な配慮を定めているもの(徳島県、三重県、茨城県下妻市、山梨県上野原市など)、マスク着用の努力義務を定めているもの(神奈川県大和市、長野県宮田村)、観光客に対するまん延対策を求めるもの(京都府京丹後市、沖縄県石垣市、東京都小笠原村)、海岸でのマナー遵守を求めるもの(神奈川県逗子市)、行政手続等の期限猶予等を規定するもの(東京都)などがみられます。
このうち、対策本部の条例化は、都道府県に多くみられますが、特措法による国の本部解散後も活動できる根拠を明確化し、自治体独自の宣言などを行って行動自粛を求める場合などは、法的根拠が存在することが望ましいと考えられます。クラスター発生施設等の公表に関するものとして、公表により権利侵害が生じる可能性があることに鑑み、鳥取県では、公表の際の一定のルールについて定めており、人権的な配慮として評価できます。観光客等に対するものとして、石垣市では、感染まん延時の来訪自粛を求めています。このほか、災害時の行政手続に関する期限猶予等の対応は、感染症以外でも必要であり、東京都が感染症以外の災害にも適用拡大している点(8)は今後の参考になるものと考えます。
このように、独自条例により様々な対応を行っている自治体もありますが、数的には少数です。今後の新たな健康危機管理も考えると、自治体の防災、危機管理、復興政策の一環として、法政策的な対応について、アフター・コロナに向けて考えておくことも必要です。