2021.03.25 議員活動
第11回 特殊な災害等への自治体の対応
3 原子力災害に伴う自治体の対応
原子力災害は、発生した場合の被害が甚大であることや、対応について専門的な知見が必要なことなど、通常の自然災害とは異なる特殊性があります。ここでは、福島第一原発事故における対応を中心に、原子力災害に伴う自治体の対応について考えます。
(1)原子力災害への対応の法的構造
原子力災害では、上記のような特殊性から、災害対応の直接の根拠法は、「原子力災害特別措置法」となります。この法律は、1999年に起きた東海村JCO臨界事故を契機に制定された法律で、位置付けとしては、災害対策基本法の特別法としての性格を持ちますが、災害対策基本法と比較して、事故時における国の強い権限行使が認められています。
その後、大震災に伴う福島第一原発事故の発生を受けて、2012年に原子力規制庁が設置され、原子力災害特別措置法が改正されました。この改正では、原子力規制庁が定める「原子力災害対策指針」が法定化(同法6条の2)され、災害対策基本法に基づく国の「防災基本計画」も原子力災害に関連した見直しが行われました。国の防災基本計画が見直されたことに伴い、各自治体では地域防災計画を見直すこととなり、多くの自治体で「地域防災計画(原子力災害対策編)」の追加などの見直しが行われています。
出典:第1回原子力防災会議(2012年10月19日)参考資料3「原子力防災会議の概要について」5頁(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/dai01/sankou03.pdf)
図3 原子力災害対策に関する制度の状況
(2)原子力災害に対応した地域防災計画の見直し(3)
原子力災害に関わる地域防災計画では、防災対策を重点的に充実すべき地域として設定される、予防的防護措置を準備する区域(PAZ)(原発等から約5キロメートル圏内)及び緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)(原発等から約5~30キロメートル圏内)を抱える自治体では、災害時の対応拠点となるオフサイトセンターの施設、資材や機材、体制の整備、避難訓練の実施、住民等の避難計画や水、大気、食物等の放射性物質等のモニタリング、避難区域の設定、医療体制等に関する計画を策定することとされています。
原発等立地及び周辺の自治体以外でも、放射性物質のモニタリング体制、放射性物質の輸送中や保有施設での事故や災害に関する対応計画などを策定しているところもあります。