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2021.03.25 議会改革

第18回 議員の懲罰等とそのあり方

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【コラム:議員の発言の取消し】
 議員は議会での発言の内容に責任をもつべきであり、発言の後にこれを変更することは基本的に許されるものではないが、議会での議員の発言に問題があった場合には、発言の取消しといったことが行われることがある。
 これには、発言者の発意による場合と、議長の職権による場合とがある。
 このうち、議員の発意による取消し又は訂正については、一般的に会議規則で規定されているものであり、発言が、不必要な発言であったり、思い違いによる発言であったりする場合などに、その取消しや訂正を認めようとするものである。この場合には、発言者が議会に申し出て、議会の許可を得て自分の発言の全部又は一部を取り消したり、議長の許可を得て訂正したりすることが認められているが、この取消しや訂正はその会期中に限られ、訂正については字句に限り、発言の趣旨を変更するようなことはできない。
 また、議員の発言の中に他人の私生活にわたるような発言、あるいは議会を侮辱するような発言など、不穏当・不適当と認められる発言などがあった場合には、議長は、発言者に発言の取消しを命ずることができる(地方自治法129条1項)。この議長の発言取消命令は、議長の秩序保持権によって行われるものであって、その命令に従う義務を生じるが、この命令だけで発言取消しの効果が発生するものではないとされる。
 議長によって取消しを命じられた発言や発言者自ら取り消した発言については、会議規則によって、配布用の会議録には掲載されない取扱いとされているのが一般的だ。
 何が取消命令の対象となる不穏当発言に当たるのかは、地方自治法や会議規則に照らしつつ議長の判断に委ねられることになる。極端な場合、発言全部が取り消され、会議録から削除されてしまうようなことも生じうるが(7)、住民の代表である議員の議会での発言だけにその取消しの範囲については慎重な考慮が必要となることはいうまでもない。
 なお、議員の発言について、他の議員から「発言取消しの動議」が提出され、その動議が可決されることもあるが、議長はこれに拘束されるものではなく、議会として取消しを要求することを決めたにとどまるものとされている。
 議長による発言取消命令をめぐる争いが裁判所に持ち込まれる例もある。県議会議長から発言の一部の取消しを命じられた議員が県に対して命令の取消しを請求した事案において、最判平成30年4月26日判時2377号10頁は、議会の運営に関する事項については議会の自律的な権能が尊重されるべきものであり、地方自治法は議員の議事における発言に関しては議長に発言の取消しを命ずるなどの権限を認め、議会が議場における秩序の維持等に関する係争を自主的・自律的に解決することを前提にしていること、議長に取消しを命じられた発言が配布用会議録に掲載されないことをもって当該発言の取消命令の適否が一般市民法秩序と直接の関係を有するものと認めることはできないことから、本件取消命令の適否については司法審査の対象とはならないとの判断を示している。
 議員の発言については、取り消された場合には、公表される会議録には掲載されないとしても、議会中継などが行われている場合には録画等として残ることもあるのであり、また、取り消したとしても、懲罰の対象となったり、自治体を相手に国家賠償請求を提起されたりすることもある。議員(statesman、statesperson)として、発言の心得や議論のルールをしっかりと身につけ、スキルを磨くことが大事だろう。

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