地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.03.25 議会改革

第18回 議員の懲罰等とそのあり方

LINEで送る

3 懲罰をめぐる紛争

 懲罰は、その内部規律に関する自律作用とされ、懲罰を科すかどうか、どのような懲罰を科すかは、基本的に議会の判断に委ねられ、その裁量が認められることになる。しかしながら、中には、その是非をめぐり争いとなることも少なくなく、それがメディアによって取り上げられたり、裁判所に争いが持ち込まれたりする例も目に付くようになっている。

(1)懲罰と審決
 この点、懲罰については、議会がその自律的な判断により行うものであることから、行政不服審査法7条1項1号により同法の審査請求の規定は適用されず、それにより違法に権利が侵害された場合には、地方自治法255条の4による総務大臣・都道府県知事の審決の申請を行うことができるものとされている。この審決の申請については、これまで、裁判所の審査の対象が除名に限られてきたこともあってか、審決の申請も除名についてのみ認められるとされてきた。この点、審決の対象を限定する合理的な理由がどれだけあったのかは議論のあるところだが、後述の判例変更により出席停止も司法審査の対象とされたことから、今後は出席停止の処分も審決の対象とされることになるものと思われる。
 また、かつては不服申立前置が地方自治法で定められ、懲罰に関する訴訟の提起については審決を経る必要があったものの、当該規定は削除され、直接に訴訟を提起することができるようになっている。
 それでも、2016年4月1日から2018年3月31日までの間に審決に持ち込まれた除名処分4件のうち3件が除名処分を取り消す審決となっており(2)、このことにも最近の懲罰に関する問題状況が垣間見える。

(2)懲罰と司法審査
 議員の懲罰をめぐる争いが裁判所の審査に持ち込まれた場合には、懲罰の性質(処分性・「法律上の争訟」該当性)が問題となりうるが、札幌市議会除名事件・最判昭和27年12月4日行裁例集3巻11号2335頁は、「市議会における議員の除名議決は、特にこれに基すく執行機関の処分をまたず直にその議員をして議員たる地位を失わしめる法律効果を生ぜしめる行為であるから、一種の行政処分と解すべく、この場合の市議会は行政訴訟特例法一条にいわゆる行政庁に該当する」とした上で、「地方自治法一三五条所定の懲罰の四種類中のいずれの懲罰を科すべきかは所論のように全然市議会の自由裁量に属するものとはいえない」とした。
 もっとも、最高裁は、その審査対象については、除名の場合には審査が及ぶとする一方(札幌市議会除名事件最高裁昭和27年判決、板橋区議会除名事件・最大判昭和35年3月9日民集14巻3号355頁など)、出席停止については、山北村議会出席停止事件・最大判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁で、板橋区議会除名事件最高裁昭和35年判決は議員の除名処分を司法裁判の権限内の事項としているが、「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らないからであつて、本件における議員の出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎないものとは自ら趣を異にしている」として、司法審査の対象から除外した。これは、同判決が「自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある」、「出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当する」と述べているように、部分社会の考え方を地方議会についても採用したものとされる。
 司法審査の対象を除名のみに限ることについては、除名と出席停止とでは質的な相違はないなどの批判も見られたところ、岩沼市議会出席停止事件・最大判令和2年11月25日裁判所時報1757号3頁は、地方自治法等の規定等に照らすと、「出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは、法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって、その性質上、法令の適用によって終局的に解決し得るものというべき」とした上で、「出席停止の懲罰……が科されると、当該議員はその期間、会議及び委員会への出席が停止され、議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる。このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。そうすると、出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきである」とし、出席停止も司法審査の対象となり、これと異なる趣旨をいう山北村議会出席停止事件最高裁昭和35年判決その他の最高裁判例はいずれも変更すべきとした。
 住民自治の具現化のため、議員が住民の代表としてその意思を当該自治体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものであることを重視したものであり、出席停止も議員の権利を制限し、議員報酬の減額等の不利益を伴うこともある以上、妥当な判断といえる。このことは、自治体議会の側に大きな影響を与えるものと思われるが、昨今の議員の懲罰の状況を最高裁も問題視し、議会の自律性を狭める判断に踏み切ったとも見ることができ、そのことにもしっかりと向き合うことが必要だろう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る