2021.03.25 議会改革
第18回 議員の懲罰等とそのあり方
2 懲罰
(1)懲罰の意義と対象
地方自治法・会議規則・委員会条例に違反した議員については、議会が、その議決により懲罰を科すことができるものとされている。議員の懲罰は、会議体としての議会内の秩序を保持し、その運営を円滑にすることを目的とするものであり、その権能は自律権の一内容を構成する。
懲罰をめぐっては、対象となる行為の範囲などが問題となる。懲罰の対象となる行為は、次の要件を満たすことが必要であり、これらによって限界付けられることになる。
① 議員によって行われた行為であること(人的限界)
② 議会の活動の一環としての行為であること(場所的限界)
③ 原則として議会開会中であること(時間的限界)
④ 地方自治法・会議規則・委員会条例に違反した行為であること(事項的限界)
これらのうち、場所的な範囲については、議会・委員会の活動における行為に原則として限定され、議会の運営と全く関係のない議会外の個人的非行を懲罰の事由とすることは妥当ではないとされている。この点、会議規則や議会基本条例に、議員の責務として「品位を損なうようなことをしてはならない」とか「議会の体面を害するようなことをしてはならない」といった類いの規定が置かれていることがあるが、その場合でも、議員の職務と関係のない私的行為が懲罰の対象とされるものではない。最高裁も、安堵村議会除名事件・最判昭和28年11月20日民集7巻11号1246頁で、地方自治法134条が「議員の懲罰を規定しているのは、議会の秩序を維持し、その運営を円滑ならしめるためであつて、議員の個人的行為を規律するためではない。従つて議員の議場外の行為であつて、しかも議会の運営と全く関係のない個人的行為は同条による懲罰の事由にならない」との判断を示している(1)。
また、時間的限界としては、懲罰は、原則として会期中の行為を対象とするものであり、かつ、その事犯のあった会期中に処理すべきであって、前の会期における事犯を後の会期において取り上げることはできないものと解されている(会期不継続の原則の適用)。仮に前の会期における事犯の処理がその会期中に終わらない場合には、閉会中に委員会の継続審査に付すことによって、次の会期において懲罰を科すことができることになる。ただし、会期外の行為でも、議会の開会を阻止しこれを流会に至らしめるような議会の運営に関連する行為は懲罰の対象とすることが可能とされ(丸森村議会除名事件・最判昭和28年10月1日民集7巻10号1045頁)、継続審査中の委員会での行為についても、国会の場合のように明文の規定を置く例は少ないようだが、懲罰の対象となりうる。
事項的には、地方自治法・会議規則・委員会条例の規定に違反した行為であることが必要とされるが、地方自治法に違反する場合とは、129条・131条・132条の規律違反のほか、議会の会議において侮辱を受けた議員が議会に訴えて処分を求める場合(133条)、議員が正当な理由なく招集に応じなかったり会議に欠席したりした場合において招状を発してもなお故なく出席しない場合(137条)も含み、秘密会の議事の漏えいもこれに該当するものと解されている。ただ、会議規則や委員会条例も含め関係する規定の中には、議員の責務規定など抽象的な内容のものもあり、何をもって違反とするかは微妙な場合も少なくなく、それを理由とした行き過ぎなども生じているところがあるようだ。