地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.03.10 議員活動

第6回 決定と議会

LINEで送る

7 制度と決定

 自治体政府の決定は、条例、規則、計画、予算等により「制度」として定められている。また、国法制度の影響を受ける。ここでは、決定に影響を及ぼす「制度」についての議論を確認してみよう。

(1)強制的圧力
 自治体政府が策定する計画の内容に関して、自治体政府が自由に策定(決定)できず、国の計画に準拠しなければならないことは少なくない。このようなことを強制的圧力という(秋吉 2015a:176-177)。例えば、自治体における総合戦略や公共施設等総合管理計画では、策定年、策定期間、意見聴取先、計画内容、進行管理方法、財政支援制度などが規定されている。「地方版総合戦略の策定状況等に関する調査結果」(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局)によれば、総合戦略については、2020年4月1日時点で地方版総合戦略を策定済みの自治体は全都道府県市区町村1,788のうち1,759となっている。また、「公共施設等総合管理計画策定取組状況等に関する調査(結果の概要)」(総務省)によれば、公共施設等総合管理計画については、2020年3月31日現在、福島原発事故の被害を大きく受けている二つの町を除く全都道府県市区町村において策定済みとなっている。

(2)拒否点、拒否権プレイヤー
 拒否点とは、政策決定過程において特定のアクターが拒否権を行使できる段階のことである。政策決定には多様なアクターが参加しているが、その中で拒否権を行使できるアクターは拒否権プレイヤーと称される(秋吉 2015a:177)。自治体政府の運営においては、可決であろうと否決であろうと議会の判断なしに主な政策の決定はできない。この場合には、議会が拒否権プレイヤーとなる。

(3)政策遺産、ロックイン効果、粘着性、経路依存性
 過去の制度は遺産となり、現在の制度に何らかの影響を及ぼす。とりわけ、過去の制度が現在の制度選択を強く拘束し、他の制度の選択を困難にする現象は、ロックイン効果と称される。いったん制度ができ上がってしまうと、全く新しい制度へと大幅に変更することは社会に多大なコストを強いることになる。さらに、粘着性と称されるように、制度はいったん形成されると、その制度による利益を得るアクターは制度を維持しようとする。政策遺産の存在、ロックイン効果、粘着性から、過去の制度が現在へと継続されていく現象は、経路依存性として指摘されている(秋吉 2015a: 181)。例えば、都市計画において用途を誘導する場合、不適格建築物が多くなるケースでは、用途地域を変更することの合意が得にくい。そこで当面は、用途地域は変更せず地区計画で新たに建築できる建物を制限し、用途純化を図ることがある。これも経路依存性の例といえよう。

(4)制度的同型化
 組織は外的環境に機能的に適合するだけでは不十分であり、その価値や信念に適合することが求められる。そのため、社会の価値や信念による社会通念が一種の圧力となり、組織が対応することとなる。この制度的同型化には、次のような三つの同型化が知られている。一つは、当該組織が依存している組織や社会から行使される同調圧力によって生じる「強制的同型化」である。二つ目は、不確実性を回避するために、他の組織を模倣することによって生じる「模倣的同型化」である。三つ目は、社会における専門家によって生じる「規範的同型化」である。規範的同型化は専門家によって専門家集団の基盤と正統性が確立されると、専門家の共通規範に基づいた同一の制度選択へとつながっていくというものである。このように、非公式の制度がアクターの認識に影響を及ぼすことによって、選択肢の範囲が同一の選択肢に限定され、同型化という現象へとつながる(秋吉 2015a:184-185)。議会にも議員にも、周辺議会や同僚議員からの圧力により足並みをそろえる「強制的同型化」、政策を安易にモノマネ提言する「模倣的同型化」、専門的知見を踏まえた「規範的同型化」がありうることに留意することが求められる。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る