2021.03.10 議員活動
第6回 決定と議会
3 決定に求められるアクター間・アクター内の情報共有と議論
決定が望ましい内容となるには、政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)の早い段階から、市民や関係機関等との情報共有と議論が求められる。このことは、政策を発議するのが市民、議会、行政のいずれであっても同じことがいえる。自治体政策の決定や実施に当たっては、市民、議会、行政が政策のアクターとして登場する。そのため、これらの関係者間で情報共有と議論が行われていないと、政策の決定や実施において謬(びゅう)や滞りが生じやすい。
同様に、前段で述べたことは、市民間、市民団体内、議会内、行政内においても当てはまる。すなわち、市民間、市民団体内、議会内、行政内においても、政策過程の早い段階からの情報共有と議論が求められる。情報共有と議論が行われていないと、政策の決定や実施において謬や滞りが生じやすいことになる。
議会内において適切な判断をするためには、議会内において情報共有と議論をすることである。その対象には、視察研修、議会報告会、委員会の内容も含まれるであろう。行政内においても首長決裁を適切かつ円滑に行うためには、担当者から首長まで行政全体としての情報共有と議論が早い段階から必要となる。そのことを通じて行政の謬と滞りを超克しうる。早い段階からの情報共有と議論が欠けている場合には、決定直前になって180度逆の結論になることもある。議会には、行政全体としての情報共有と議論が早い段階から行われていることを確認し、制御することも求められている。
4 決定における「公共性の基盤」と「公共性の内容基準」
決定するときに、総論賛成・各論反対ということで意図した合意が得られない場合がある。議会においても、会派においても、議会と他のアクター(市民・団体・法人・行政・他の自治体・国・国際機構等)との間においても、このようなことが起こりうるであろう。
このことは、「議論の慎重さ」の必要性につながる。議論に慎重さを必要とする一つの理由は、市民も議会(議員)も行政(首長・職員)も、「集団思考」の危険性を持つことにある。集団で意思決定をする場合、個人での意思決定よりも非合理的な決定になることがある。例えば、場の空気に流されて(同調圧力により)誤った選択をしてしまうことがある。これを防ぐ手段としては、一つの問題を複数の小集団に分けて議論したり、ディベートにより反対意見をいう役割を意図的につくり議論するなど、いくつかの話し合いの手法を組み合わせて行うことが効果的である。そこでは、議論に慣れている人も、議論に慣れていない人も、平等に議論に参加できる可能性が高まる。このような議論の工夫により、佐野亘がいうように「話し合いこそがもっとも広い意味での公共性を支えている」(佐野 2020:256)ということになる。「公平な議論」は「公共性の基盤」であるといえる。
また、土山希美枝は、よりよい〈政策・制度〉について次のように述べている(以下、〈政策・制度〉を政策の言葉に置き換えて表記する)。よりよい政策とは、①全体の政策で必要不可欠な課題に対応している状態、②個別の政策の効果が高い状態である。①についていえば、「必要不可欠」を上回る政策は資源のムダだが、「必要不可欠」なのに対応しないならサボリとなる。そして、時間の経過は一般的に課題を深刻にする。よい例が少子化である。②についていえば、政策の形成と展開に当たって高い効果を目指すのは当然だが、限りある資源の有効活用としても必要である(土山 2019:3)、という議論である。この議論は、よりよい政策の内容を決定する基準であり「公共性の内容基準」であるといえる。