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2021.03.10 議員活動

第6回 決定と議会

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

1 本稿において議論する「決定」の範囲

 今回は、自治体政府の政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における決定と議会について考えてみよう。選択肢作成が行われると、次に決定が行われる。ただし、連載第5回で述べたように、選択肢作成と最終的な政策案は、行き来しながら作成されることも少なくない。そこで本稿では、「行政による選択肢の作成作業(複数)」(A)から「行政による幅のある政策案(最終案)の作成作業(順位付き複数案)」(B)そして最終的な「決定」(C)までを幅広く決定の政策過程として取り扱うこととする(図1参照)。
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出典:筆者作成
図1 「行政等による発案」から「決定」までの過程

2 「積極的な決定」「消極的な決定」と「手続の確保」「学習」

 決定には、「積極的な決定」と「消極的な決定」がある。「積極的な決定」とは、政策を実施し何らかの方向で現状を変更しようとする決定であり、「消極的な決定」とは、政策課題に対して政府は特に新しいことをせず現状を維持する決定である。そして、決定は、その重大性ゆえ、決定過程が明らかにされていることが求められる。また、決定された政策を周知し、政策を実施することが求められる(石橋章市朗 2018:143-144)。
 この観点からすると、「積極的な決定」は政策を実施し何らかの方向で現状を変更しようとする決定であるため、市民や自治体政府(議会・行政)における争点となりやすい。「消極的な決定」は、政策課題に対して政府は特に新しいことをせず現状を維持する決定であるため、往々にして争点となりにくい。しかし、自治体を取り巻く環境が大きく変わる今日においては、「消極的な決定」も適正な議論のもとに行われることが求められる。議会・議員には、「積極的な決定」だけでなく、「消極的な決定」においても適切な決定をしうる準備が必要となる。
 そのための準備としては、「手続の確保」と「学習」が求められる。ここで「手続の確保」とは、「消極的な決定」についても「積極的な決定」と同様の、情報公開・情報共有や市民参加・議会参加・行政参加などの手続が存在することの確認・見直し(是正)である。「学習」とは、よりよい決定を可能ならしめる能力を学び蓄えることである。学習することで様々な理念が生まれてくることもあろう。例えば、政策に対する「費用の高額─低額軸」に「自然保護積極─消極軸」を加えることにより「争点の多元化」を図り、よりよい決定を可能ならしめることも考えられる。

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